2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

助産師の現在

『助産師たちの夜が明ける』(フランス、レア・フェネール)は、若い助産師たちが、過酷な労働現場で、ストレスと重責に悩みながら、日々、生死の現場をこなしていく。ドキュメンタリーさながらのリアルな撮影に加え、助産師の葛藤や頑張りを美談だけで終わ…

黒沢清の世界

音をきっかけに料理教室で起きる不気味な刺殺事件。『Chime』(日本)は、短編ながら、黒沢清本来の怖さがよみがえったサイコサスペンスである。教室の講師だけでなく、妻子や生徒の奇怪さも、黒沢らしい世界だ。

誰もが犯人

和歌山毒物カレー事件の犯人は、テレビが報道した主婦なのか。証拠不十分なまま、死刑判決を受けたが、保険金取得などのメリットもないまま、犯行に及んだのかどうか。状況証拠だけでは断定できないはずだが、イメージで作った犯人像をマスコミも検察も撤回…

バカンスの裏側

『宝島』(フランス、ギョーム・ブラック)は、パリ郊外の川べりで遊ぶ人々を撮った。被写体に許可を得た上での撮影とは言え、軽薄な若者から、わんぱくな少年、いわくつきの従業員など、様々な人々の姿がある。 レジャーアイランドの訪問者にも、経済的な格…

理解

疎遠だった父の心情を息子が知るようになるのは、父が認知症になってからだった。『大いなる不在』(日本、近浦啓)では、残された手紙や関係者の証言から、人となりを知る。少年時代から父に対していい思いを抱いていない息子だが、それでも一人の人間のい…

本物

月面着陸の映像がフェイクだったら? 十分あり得る話を『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(米国、グレッグ・バーランティ)は、コメディタッチで描く。過去に仲間を事故死させた負い目を持つ生真面目な発射責任者と、政府の要人に要請されてフェイク映像に…

大衆の政策

大阪で圧倒的な支持を得る政党の政策や支持層は、決して地域固有のものではない。吉弘憲介『検証大阪維新の会』(ちくま新書)は、政策の効果や支持の傾向をデータをもとに、普遍性を実証的に検分した。 限られた公共資産の恩恵を指示者の多い層にのみ割り振…

秘められたもの

絵画でも彫刻でも、すべてが明かされているわけではない。形而上画家の全体像に迫る『デ・キリコ展』(東京都美術館)に秘められたものは何か。

三姉妹の劇

橋口亮輔の新作とはいえ、『お母さんが一緒』(日本)の実験性は弱い。演劇としては佳作であったとしても、映像の醍醐味は欠けているからだ。とはいえ、頑固な母親をめぐって、温泉宿で三姉妹がいがみあう喜劇は、演者のうまさもあって、好感の持てる結末に…

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