2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

言葉が届くために

愛情がいつのまにか暴力に転じている。暴力的な振る舞いを愛情だと感じてしまう。暴力性と享楽を同時に感じている。ファンをはじめとする受け手は、そのような危うい感触とともに芸能に触れている。(矢野利裕『ジャニーズの感触-むしろ芸能スキャンダルと…

裁きの論議から漏れたもの

一人の人間が特定の場に出向いて起こす無差別の殺人は、秋葉原以外でも、周期的に発生している。この種の事件を道徳論や精神論で裁いたところで、何ももたらされない。中島岳志『秋葉原事件 加藤智大の軌跡』朝日新聞出版では、友人もおり、仕事の適応力も決…

芸能と社会

芸能と社会的公正を地続きで考えよう。ジャニーズ問題とパレスチナ危機を同じ口で語ろう。政治の話をしたばかりのその声で、あまやかなラブソングを歌おう。(松尾潔『おれの歌を止めるな』講談社) 本来つながっているものが、別物として区分けされ、特殊化…

ネオンの輝き

香港の夜景を着飾ったネオンは、建築法の改正で大半が消えた。『燈火(ネオン)は消えず』(香港、アナスタシア・ツァン) は、こうした時代にネオンサインの職人として生きた夫の死後、彼のやり残した仕事を完成しようと、妻や愛弟子が奔走する。 失われた…

個人の力以外に

小さな人間の恨みつらみとして、糾弾され、実刑手段のみで片づけられそうな「京アニ事件」の加害者は、ロスジェネの被害者でもあった。雨宮処凛は「犯行を踏みとどまらせるものが何一つない社会とは」(『週刊金曜日』1月12日号)で、彼の経歴や社会背景を伝…

自分流

毎日大量のネタを考えては投稿し、お笑い劇場や芸人にもセンスを認められながら、人間関係が不得手なために、ことごとく挫折する。ハガキ職人の自伝的小説を実写化した『笑いのカイブツ』(日本、滝本憲吾)は、天才的なオタクの物語と言えようが、彼が実社…

韓国のエンタメ

韓国の軍人が拾ったくじは、巨額の賞金が当たっていた。ところが、紙が飛ばされ、境界線を越えて、北朝鮮の兵士に渡ってしまう。取り分を巡って、両軍兵士が争うが、換金のために一致団結。両軍に連帯感が芽生えていく。 『宝くじの不時着 1等当選くじが飛ん…

YouTuberのホラー

手の置物を握り、呪文を唱えると、霊が憑依する。のめり込むあまり、制限時間を超えると、見たくないものが見え、命に支障をきたす。 YouTuberのフィリッポウ兄弟による『TALK TO ME』 (豪)は、脚本の良し悪しはともかく、母を亡くした女子高生のトラウマ…

みずみずしい日々

役所広司の演じる清掃員が巡回するトイレは、デザイン的におしゃれであり、汚物自体 を映すわけではない。疎遠だった親類との再会も、行きつけのバーの女将の男とも、激突はしない。道を外しそうな同僚も、職場から去ってしまう。 『PERFECT DAYS』(日本、…

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