2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

老いての夢

もはやリングで闘うことはできないし、練習相手すら満足に務めることができない。『クリード チャンプを継ぐ男』(米国、ライアン・クーグラー)では、老いたロッキーが、盟友アポロの息子のため、トレーナー役を引き受けて、世界戦に臨む。病を押しての姿が…

新たなフォース

新シリーズ『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(米国、J・J・エイブラムス)では、従来の神話性が身を潜め、アクションだけが展開される。ハン・ソロ父子の葛藤も、ルークとの再会も、感情を揺り動かすような造形にはなっていない。意図の効果は、次回作以…

純愛のリアリティー

離婚したての父を娘の友人が奪おうとして、なりふり構わぬ攻勢に出る。 『友だちのパパが好き』(日本、山内ケンジ)は、そんな彼女だけでなく、職場も学校も愛人も、すべてが極端な人物ばかり。極端故に純愛が成立するという展開が、リアルに見えるかどうか…

他者の手

『魔女の宅急便』(日本)であれ、他の作品であれ、宮崎駿のアニメでは、行き詰った主人公を必ずだれかが助ける。あるいは、別の世界へと導いてくれる。 積極的な主人公の飛躍も、独力だけではない。 場面を変え、世界を開くには、他者の手も要るのだ。

人間力

時代の変化と共に解体を迫られる諜報部門。悪と裏で手を組む組織長。 『007 スペクター』(米国、サム・メンデス)では、内なる敵がジェームズ・ボンドの活動を妨害する。 グローバル化とシステム革新は、人間の行動に様々な制約を設けるが、縛りを打破する…

ゲゲゲの日常

『ゲゲゲの家計簿』(小学館)は、水木しげるが貧乏時代を綴った生活漫画である。 家族との同居で、ぎりぎりの家計。残金ゼロの日もたびたびあるが、たまに好きな物を買ったり、遊ぶ楽しみは絶やさない。 売れっ子になったからこそ、振り返ることのできる過…

ロボット俳優

ロボットが演技する映画は、これから増えるだろう。 『さようなら』(日本、深田晃司)では、原発爆発後の近未来で、異国難民の死を見守るアンドロイドを演じている。 寿命のある人間と、エネルギーのある限り動くことのできるロボット。 生命が永遠であるべ…

不快さの逆説

救いをもたらすわけでもなければ、癒しや爽快を与える場面も排除する。 冷酷な二人組から逃げきれずに一家が惨殺される『ファニーゲーム』といい、年上教師と教え子の禁断の愛が何ら幸福をもたらさない『ピアニスト』といい、快楽を与えぬミヒャエル・ハネケ…

誠実な演出

理解できそうにない人間にも、各々の事情と感情がある。 『恋人たち』(日本、橋口亮輔)は、多数の共感は決して得られないであろう人間の内面を、乱暴に扱うことなく、丹念に救い取っている。 地道で丁寧な手つきが、作り手の誠実さを感じさせる。

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