2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

偽りのホラー

黒沢清『クリーピー 偽りの隣人』(日本)は、隣に住む不気味な男の反抗を元刑事があばく。 隣人の犯行が明るみになっていない前半こそが、ホラーとして、鬼気迫る。猟奇殺人が露出して以降は、ありがちのスプラッター映画だ。 隣人による偽の娘や元刑事の夫…

ゆとりとはなにか

『ゆとりですがなにか』(日本テレビ)は、ゆとり世代のアラサー男子人のゆとり世代3人の社会人生活奮闘記だ。 仕事・家族・結婚……。それぞれの問題で、世代論ではくくれぬ個の差や新旧世代の衝突が、宮藤官九郎の脚本によって、巧妙に繰り広げられている。…

黒さの源泉

『ヒメアノ〜ル』(日本、吉田恵輔)は、快楽殺人者の森田正一がいやなやつなのは言うまでもないが、周辺もいやなやつばかりだ。旧友もストーカー相手の女も、腹黒い。森田との差は、黒さを表に出すか、内に秘めるかだけだ。 森田を作り上げたのは、彼自身だ…

妄想の幸せ

気力を失っていた哲学教師が、悪徳判事の殺害を思い立ち、俄然元気になる。ところが、計画の成功後、恋仲になった教え子からは、歓迎されるどころか、逆に責められて……。 『教授のおかしな妄想殺人』(米国)は、アレン流の教訓劇をますます軽妙に語っている…

文学の継承者

又吉直樹は、読み手としても、書き手としても、ひたすら真摯だ。 『夜を乗り越える』(小学館よしもと新書)では、自身と文学のかかわり方を誠実に綴っている。 文学界の継承者として、今だからこそ必要な存在だ。

深い人物

『海よりもまだ深く』(日本、是枝裕和)は、ダメ男にも、母や元妻など周辺の人物にも、いかにも共感を呼ぶような妥協的要素を与えられてはいない。だからこそ、彼らの存在は、いっそうリアルであり、決していい印象を与えないのに、親しみを与えるのである。 …

米国から世界へ

『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(米国)は、物騒な題名だが、表向きは温厚なスタイルに徹している。模範とすべく各国の制度を学ぶために、ムーアがヨーロッパを訪ね歩くのだ。 教育も労働も模範は米国にあった。まるで『青い鳥』のように、ムーアは気…

ヨーロッパのまなざし

140分ワンカット・街中の即興演出。『ヴィクトリア』(ドイツ、セバスチャン・シッパー)は、技術面ばかりが話題にされるが、設定にも注目すべきだろう。 ベルリンを舞台に複数言語が飛び交い、ユーロ紙幣の強奪を巡って振り回される若者たち。一夜の思いが…

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