2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

路上画家の半生

ドキュメンタリー映画『ミリキタニの猫』(米国、リンダ=ハッテンドーフ)の主役は、ニューヨークの日系人路上画家だ。 ジミー=ミリキタニ。戦時中、日系人ゆえに強制収容所へ送還された。米国に愛想を尽かして、自ら市民権を捨て、その後、失職。現在は市…

不適応

環境に敏感な人は、年季を積んだところで、周囲への違和感が残るものである。 われわれは日々に、そして長年、周囲とさまざまに折り合って暮らし、そのことを苦と感じるのもいまさらの甘えであるように思いなしているわけだが、われわれの心の奥底には、どん…

映画の誕生

画コンテに情熱をかけた黒澤明。「絵画」が「映画」になる瞬間を記者は『八月の狂詩曲』のラストシーンに求めた。豪雨の中で傘を持った老婆が駆け出す場面だ。 黒澤の証言がある。 「あれは何だと言われても、僕も説明できない。要するにあれが映画なんだよ…

笑い

NHKのコント番組『サラリーマンNEO』の演出を務める大宮エリーは、かつて会社勤めをしていた。 新人の頃、大きなプロジェクトに参加していたが上司に言われる。「プレゼンは失敗だった。で、君に降りてもらう」。一番、下っ端の私だけが降りてどうなる…

聴覚

イランでは、女性がスタジアムで男性のスポーツを観戦することが禁止されている。試合を見たければ、男装して潜入するしかない。 『オフサイド・ガールズ』(ジャファル=バナヒ)はイランの映画だ。ワールドカップ・サッカーの代表決定戦当日。スタジアムに…

他人幻想

友達関係は、互いの距離を意識しないことで、かろうじて保たれる。 魚喃キリコの漫画「友達のおしまい」(『痛々しいラヴ』祥伝社・所収)の「あたし」は、学生時代の女友達、マチダと卒業以来4ヶ月ぶりに会って酒を飲む。 酒に酔いながらも、「あたし」は、…

風景

『長江哀歌』(中国、ジャ=ジャンクー)には、巨大な建物がロケットのように離陸したり、一瞬で崩壊する場面がある。 建物というのは、日々建て替えられ、姿が変わるもの。植物のように伸びていったり、ひしゃげたりするのだから、胞子のように飛んでいって…

シェフ

恋愛映画『厨房で逢いましょう』(ドイツ・スイス)の主役は、天才シェフと子持ち女だが、女の夫も印象深い。仕事がうまくいかず、シェフの庭を荒らしたり、ワインセラーを破壊したりといったかんしゃくぶりが、痛々しくて哀しい。 脇役の存在感が、作品の隠…

1952年、コペンハーゲン北西部の湿地でグラウベール人のミイラが発見された(『ナショナル ジオグラフィック』9月号「湿地に眠る不思議なミイラ」参照)。 ミイラは、だれか。なぜ殺されたのか。 コペンハーゲン大学の法医学者、ニルス=ルノープは、解明の…

角度

「横顔って右と左で全然違うし、正面とはまた違った顔が見られるから、眺めていると楽しいんですよね。笑ったときの口角の上がり具合とかね……」(aiko談―『月刊歌謡曲』10月号のインタビュー) 物事を同じように見ていると飽きてくる。そのうち興味がなくな…

まだ戦後ではない

ドキュメンタリー『陸に上った軍艦』(日本、山本保博)では、映画監督・新藤兼人が太平洋戦争末期の軍隊生活を回顧する。 訓練という名目で下級兵は尻を殴られ、靴をさかさまに履かせて行進させられる……。中身こそ違えど、こうした日常は、現代人が見ても、…

ブラッド=ピットに倣え!

スロットマシーンに入れるコインを席に1枚だけ残し、男が立ち去る。女がそのコインを入れると、マシーンが大当たりする。 『オーシャンズ13』(米国、スティーブン=ソダーバーグ)を見た人のなかには、ブラッド=ピットが演じた男に倣って、だれかを大もう…

のんびりと、

晴れた日、スタイリストの伊藤まさこは、都内をてくてく、すたこら歩く。ギャラリーでかわいい展示を楽しみ、おいしそうな匂いをかぎながらパンを買い、アンティークの家具が置かれた喫茶店に入る。 著書『東京てくてくすたこら散歩』(文藝春秋)で紹介され…

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