2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

叙事詩の根底

自然と生命をテーマに据えた壮麗な叙事詩。芸術アニメ『レッドタートル ある島の物語』(フランス・日本、マイケル・デュドク・ドゥ・ビット)をそう位置づけるのは、正当だが、根底はそれだけではない。 島を脱出することができず、妻を養い、子どもを育て独…

伝える形

『聲の形』(日本、山田尚子)は、ヒロインの硝子が障害者だが、いわゆる道徳アニメではない。傷害の有無以前に、他人同士が、自分らしさを残しながらも向き合えるかという、普遍的な物語である。 逃げる自分、都合に合わせる自分、人に譲れない自分、遠くか…

人間とは何か

ロボット工学者・石黒浩教授は、現在、大学の偏差値は、医学部・法学部・理学部・工学部の順となって、教育学部は下だが、将来は逆転すると見ている。 「医者や弁護士の仕事の大半はパターン化して再現できるから、将来的にはコンピュータ技術に置き換え可能…

一線を越えず

『ティエリー・トグルドーの憂鬱』(フランス、ステファヌ・ブリゼ )は、救いのない日々をドキュメンタリーのようなリアルさで映し出す。 家族を養うために、ティエリーは必死だ。仕事を得るために、高齢ながらも新しい技能を取得し、模擬面接で仲間から厳…

終わらない希望

妻子と別れ、投げやり気味の日々を送る男。彼を挑発する女。 『オーバー・フェンス』(日本、山下敦弘)の男女は、まだ終わった年齢ではない。鳥のような飛躍を目指すことはないが、ずっと檻にいたいとも思っていないのだ。男が訓練校で大工になるための修行…

道は多彩

『ポンピドゥー・センター傑作展』(東京都美術館)は、特定のテーマにこだわらず、1906年から1977年のコレクションをたどる。 表現も生き方も、実に多彩な芸術家のいることが、再認識できる。幼少時から美術家としての教育を受けた者だけではなく、比較的歳…

人間はどこまで必要か

主人公以外は、すべてCGでありながら、『ジャングル・ブック』(米国、ジョン・ファブロー)の動物たちは、実写さながらにリアル。 人間の俳優は、将来どこまで必要なのか。現状では、CGの動きにも、俳優たちの動作が活かされているが、いずれそれも、人…

人間の負うもの

村田沙耶香『コンビニ人間』(文藝春秋)の未婚女子は、コンビニでバイトの身分。職務に忠実である限り、傑出した待遇は期待できないが、そこそこの居心地よさを継続はできる。 責任の重いポジションなら、そうは行かない。罪も失敗も引き受けざるを得ない。…

ゆるい笑いだけでなく・・・

『不思議惑星キン・ザ・ザ』(ソ連、ゲオルギー・ダネリア)は、ゆるい笑いに満ちたナンセンスSFと見せかけて、旧ソ連の実像を風刺。階級主義や一元的価値観にとらわれない相互扶助の姿勢を表明している。 繰り返しみられる映画には、見られるだけの多層的…

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