終わらない希望


 妻子と別れ、投げやり気味の日々を送る男。彼を挑発する女。
『オーバー・フェンス』(日本、山下敦弘)の男女は、まだ終わった年齢ではない。鳥のような飛躍を目指すことはないが、ずっと檻にいたいとも思っていないのだ。男が訓練校で大工になるための修行をし、女がアルバイト先の動物園で動物を外に放つのは、このままで生を終えようとはしない心境の現れである。
 周囲の人間たちが、惰性的な生き方に埋没しているなか、彼らは変化を求めようとしている。
 敗色濃厚な野球の試合で、唯一のさく越えを果たそうとする男と、彼の前で踊り、精一杯の情熱を感じさせる女との交差は、いかなる場にあっても、希望を感じさせるものである。

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