2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

映画の感触

耳の聞こえない女子ボクサーが主役とはいえ、『ケイコ 耳を澄ませて』(日本、三宅唱)は、視覚障害を前面に打ち出したわけでもないし、試合での劇的な盛り上がりを狙ったものでもない。だが、時間の経過や人の絡みによって、心に刻み込むのは、まぎれもなく…

家族の物語

前作から加わったのは、森林から海上に戦いの場を変えた特撮の精度だけではない。『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』(米国、ジェームズ・キャメロン)は、先住民を妻にしたアバター一人ではなく、家族の結束で、民族を守るという、より広範な物語になっ…

籠城の痕跡

支配する側の警察からすれば、武器を持たない若者とて、抗議運動にかかわる者は暴徒にすぎない。あるべき生活も許されるべき自由も、考慮すべき余地はないとして、犠牲者は浮かばれない。 『理大囲城』(香港、香港ドキュメンタリー映画工作者)では、名門大…

ドキュメンタリーの記憶

被写体や公開の場に制約のあるドキュメンタリーだが、今日の素材は豊富だ。大島新『ドキュメンタリーの舞台裏』(文芸春秋)は、『なぜ君は総理大臣になれないのか』など、テレビ出身の監督が、実体験をもとに、製作現場や方法について明かしている。目まぐ…

往時の一人芝居

ホットな時事ネタを風刺するコント集団の年末公演『ザ・ニュースペーパーPart101』(博品館劇場)。舞台では、10月に死去したリーダー、渡部又兵衛がまだ元気だった頃の映像も流された。 妻や娘たちが旅行に出て、一人酒を味わう熟年男。解放されたのは、こ…

湿地帯で生きる

幼少期に家族から見捨てられた女。湿地帯の小屋に一人で住んでいた。美貌に惹かれた男ともいたが、一人は彼女と愛しあった挙句、立ち去って、連絡が取れなくなる。もう一人の男は、死体となって発見された。彼は婚約者のいることを隠していたばかりか、暴力…

ガラクタはアート

ガラクタに見えるようなものを保存し、スペースを取る。『大竹伸郎展』(東京国立近代美術館)のアートには、意味や効果といった世間的な価値観とは対極の解放感がある。

永遠の恐怖

写真や動画が当事者の目的に沿った宣伝に使われている分にはいい。個人の写真や動画が、知らぬ間に悪用され、拡散されていたら……。ネット上の投稿はIDの更新後も続き、匿名の手紙が届けられ、どこで誰に見られているかの不安を永遠に払しょくできない。 「誰…

悲惨ではなく

ショービジネスでの成功を夢見た母娘の没落が主軸だが、『グレイ・ガーデンズ』(米国、アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス、エレン・ホド、マフィー・メイヤー)というドキュメンタリーで記録されたのは、それだけではない。汚れ…

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