2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

生き残るべき人間

食べる。畑を耕す。水をくむ。糞を集める。洞穴で寝る。『名前のない男』(中国・フランス、ワン・ビン)は、農夫のシンプルな生活をひたすら映す。 男は汚れた手のまま、野菜を調理し、むさぼるように食らう。それで健康を害した様子は見えない。どれだけ除…

本来の平和

テレビ収録が前提だったとはいえ、『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』(日本、豊島圭介)で公開された三島と東大全共闘との討論会では、学生のどんな意見や態度にも、真摯に耳を傾け、いたずらな衝突で済ますのではなく、対等に言葉をかわそうとする三…

セクハラに立ち向かう

番組抜擢をちらつかせ、セクハラ行為を重ねたテレビ局のCEO。被害者の女性たちが局内で声を上げるには、地位の喪失など、多くのリスクを伴う。『スキャンダル』(カナダ・米国、ジェイ・ローチ)は、それぞれの立場で事件に立ち向かった女性3人の生きざまを…

生物の共存

広大な荒れ地が恵み豊かな農場に生まれ変わった。家畜だけでなく、野生の鳥や動物、虫たちも集う楽園だ。『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』(米国、ジョン・チェスター)は、監督が妻と農園を作り上げた6年間の悪戦苦闘が、美しい映像で…

スターの晩年

ハリウッド黄金期を代表するミュージカルスター、ジュディ・ガーランド。『ジュディ 虹の彼方に』(英国、ルパート・グールド)は、最後のロンドン公演に焦点を絞って、短いながらも濃密な生涯を描く。 才能に恵まれた彼女が、なぜ薬に侵され、私生活でも平…

美しさの意味

ドイツに併合されたオーストラリアで、ヒトラーへの忠誠と兵役を拒否した農夫。実在の人物だが、その抵抗に意味があったかとと問われれば、少なくとも彼と、彼を愛した妻にとっては、あったと言えるだろう。どういう形であれ生き続けるということに価値を見…

戦場という日常

『1917 命をかけた伝令』(英国・米国、サム・メンデス)で注目すべきなのは、全編ワンカットに見える撮影法だけではない。伝令役の若い兵士が、決死の使命が戦場ではただの駒にすぎなかったことを思い知らされる結末まで描いたことを、評価すべきだろう。 …

車椅子からの解放

『37セカンズ』(日本、HIKARI)のユマは、脳性麻痺で車椅子暮らしだ。入浴や排せつを独力ではできず、誰かの助けなしには生きていけないが、それでも限られた自由に制約をつけられたくはない。生涯ゴーストライターで終わろうとは思わず、漫画家として表舞…

はじめの一歩

隠す理由がないにもかかわらず、明確な根拠を示すことのないまま、イベント自粛と学校休校が要請され、国民の大半が従った。今後は総理大臣であれば、独断で徴兵令でも戒厳令でも出すことが可能だろう。他国と違い、頑強に抵抗する者は希少であり、演劇や美…

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