2018-01-01から1年間の記事一覧

マイノリティーを超えて

人種・性、そして音楽。すべてマイノリティーだったが、マイノリティーを超越した。 『ボヘミアン・ラプソディ』(米国、ブライアン・シンガー)のヒットには、時代に望まれた要素がある。

家族の劇場

引きこもりの息子にだけ異変があったわけではない。父も母も妹や親類も、何かしら異変があったのだ。『鈴木家の嘘』(日本、野尻克己)の一家は、息子の自死をきっかけに奇行が鮮明になるが、混乱も収拾も、一家族だけの物語ではない。すべての家族は、悲劇…

無限の絵

同じようなポーズがいくつもの絵に描かれている。それぞれ違う絵だ。 モチーフが限られていても、絵は無限に創造できる。

挑戦の代償

『恐怖の報酬』(米国、ウィリアム・フリードキン)は、旧作とは別物の野心作だ。 主人公の危険な挑戦と代償は、映画の制作と興行とも、重なって見える。

小説の様

吉田 滑稽感、笑い、そういうものがなきゃ、ことに小説なんて様にならないじゃない。 丸谷 そうなんです。普通の人間ならみんな滑稽なものだし、また、そういう人間が登場する世界だからこそ、ついでに信用するというものでしょう、小説って。…… (吉田健一…

狂気の向こう

女優姉妹の栄枯盛衰と確執。 『何がジェーンに起ったか?』(米国、ロバート・アルドリッチ)は、愛憎のサスペンスだが、狂気の向こうに切なさがある。

作り物の力

『ギャラクシー・クエスト』(米国、ディーン・パリソット)は、『スタートレック』のパロディーだが、原作を嘲笑しているどころか、物語をたたえ、愛をささげている。 願望が実現されていない現実よりも、夢をかなえた物語のほうが、逆境では力になる。作り…

奔放な物語

『半分、青い。』(作・北川悦吏子)は、バブル回顧の象徴と言うべきか、一貫性のない展開は、構成が下手なのではなく、狙いなのだろう。物語のいい加減さが、魅力でもある。 一度しかない人生。失敗やハンディを引きずらず、次々に転換する奔放さも、必要な…

ワインの味

『おかえり、ブルゴーニュへ』(フランス、セドリック・クラピッシュ)は、事情をかかえた3兄弟が、父の死後、実家の農園でワイン作りに挑む。 ブドウの収穫、繊細な醸造……。仕上げの選択も、作り手次第だ。 複雑な味は、作り手の個性が反映されるのである。

言葉の覚悟

『筒井康隆展』(世田谷文学館)は、作家の仕事ぶりを視覚に訴える企画展だ。一時期の断筆時代をものともせぬ膨大な仕事量が圧巻だ。一級の役者や音楽家としても活躍した筒井の多彩な才能は、今日の芸人を、質量において、はるかにしのぐだろう。 執筆量は多…

時空を超えて

風景でありながら、風景を超える。描かれた筆致よりも、更なる奥行きがある。 『生誕110年 東山魁夷展』(国立新美術館)の画は、人を立ち止まらせ、時空を超えた思索へと誘う。

映像の緊迫感

若いうちの一時期しか稼げないモデル業。その間に仕事を得るためには、容姿とセンスに加え、売り込み能力や運も必要だ。ドキュメンタリー『モデル』(米国、フレデリック・ワイズ)は、モデルも、彼らを使うスタッフやエージェントも、始終真剣である。映像に…

人間の強欲

伝説の怪作『グリード』(米国、エリッヒ・フォン・シュトロハイム)は、節度のない人間たちがいがみ合う濃密な悲喜劇だ。 成り上がりの夫も、守銭奴の妻も、裏切者の友も、もとは小鳥一匹殺せない小市民だった。変貌は、他人事とは思えない。彼らの強欲は、人…

演劇の時代

青年団『ソウル市民』(こまばアゴラ劇場)の切迫感は、劇団員が年を取り、再演の完成度と重厚さが増したためだけではない。日本がかかえる対外諸国との関係が、よりリアルで、多面的になったためでもある。 演劇は時代を再現し、時代を予見する。

多民族の町

167の言語が話され、多民族国家の代表とも言えるジャクソンハイツにも、開発の波が押し寄せ、マイノリティーが移住を余儀なくされている。そんな町でも、人々が集会をしたり、抗議運動を起こしている。 『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』(米国・…

トランプを勝たせたもの

なぜトランプが選挙に勝てたのか。あるいは、なぜヒラリーが負けたのか。『華氏119』(米国)は、マイケル・ムーアが、選挙前の動きから民主党に抜けていたものを映し出す。 オバマとて、スピーチは立派でも、政策の実態は、欠如していたものも少なくなかった…

自然な死

寿命を察して、死を迎えるまで過ごす聖地。ガンジス川のほとりにあるバラナシだ。 『ガンジスに還る』(インド、シュバシシュ・ブティヤニ)は、息子が父を連れて、施設で最後の時間を共にする。悲壮感はなく、ユーモラスでさえある。インド人の息子とて、ギ…

政治家の条件

暗殺されたケネディに比べ、あとを継いだジョンソンは、地味な評価だった。だが、前大統領の遺志を尊重し、公民権法を成立させたのは、したたかなジョンソンの政治力によるものだった。 『LBJ ケネディの意志を継いだ男』(米国、ロブ・ライナー)は、ケネディ…

茶道の楽しみ

一時期だけではない。彼女は、若い頃からずっと通っている。季節に応じて。あるいは年代に応じて。茶道は道具も手順も日々変わる。経験を積めば積むほど、新しい発見がある。あるとき突然気付くこともある。 『日日是好日』(日本、大森立嗣)は、茶道の奥深さ…

頑なな女

バカンスを共に過ごす恋人を探しているくせに、どれだけ家族や友人たちが機会を設けても、頑なな態度を崩さない。『緑の光線』(フランス、エリック・ロメール)の女が言い寄る男を片っ端から拒絶するのは、直感を信じているからだ。どれだけ人に誤解されよう…

風通し

絵画の題材になりそうな美しい田舎町に、建設会館を立てようと奔走する市長。反対する小学校の校長。市長の構想に異議を唱える作家。村人の言葉を聞き取るジャーナリスト。『木と市長と文化会館 または七つの偶然』(フランス、エリック・ロメール)は、彼ら…

多国籍の視点

同性婚をした弁護士二人の公私にわたる日々を映しつつ、彼らが訴訟を手がけるマイノリティーの人々を通して、社会の裏面を見つめる。信念に基づく弁論を披露させながらも、根底にある愛情や生活を形作る繊細さを見失わないようにしている。 ドキュメンタリー…

写真を超えて

一時期、写真に熱中したボナールは、あるときから突然写真をやめてしまう。写真に頼らぬ記憶と想像が、絵の原点だった。

恐るべきカンニング

入試のカンニングが、こんな社会派サスペンスに変わるとは。 『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(タイ、ナタウット・プーンピリヤ)は、中国で起きた事件をタイに置き換え、驚きのストーリーを仕立て上げている。 カンニングのほうが、まともに勉強する…

生きる演出

監督にも取材者にも、迎合しない。堂々と向き合うことで、余計な型を取り払い、もう一つ奥の引き出しを開けさせる。 女優・樹木希林は、生き方の演出家でもあった。

もう戻れない

厳しい寒さの中、獲物を取れなければ、その日の食はない。氷の家で寝て、狩りをして、食べるだけの一日。そりを引く犬たちは、気まぐれだし、子どもたちはあまりに無邪気だ。 『極北のナヌーク』(米国、ロバート・フラハティ)は、消えるべくして消えたイヌ…

生きる女

体現された女の生き方。現実と小説とのかかわり。二兎社『書く女』は、樋口一葉の生きざまを彼女に影響を与えた大勢の人間を絡めて、浮き上がらせていく。 場面転換の妙、視点の現代性など、いずれも巧みだ。小説の悲劇性、一葉の薄幸から、逆説的に生きる力…

ギリギリのエンタメ

囚人上がりの軍人たちが、ドイツ軍将校のパーティーに潜入し、屋敷の爆破を決行する。成功すれば、減刑を果たせるのだ。民間人さえも地下に閉じ込めての発火は、ナチスの収容所政策を連想させる。 はぐれ者の活躍で奇襲は成功したものの、敵味方双方とも多数…

アートの国

88歳の映画監督アニエス・バルダと、34歳のストリートアーティストJR。年の離れた二人同士もさることながら、アートに協力する労働者たちも、アートに対する敬意がある。『顔たち、ところどころ』(フランス、アニエス・バルダ、JR)は、アートが生活に根づ…

奥崎謙三的なもの

原一男・疾走プロダクション編著『ドキュメント ゆきゆきて、神軍 増補版』(皓星社)は、本編のドキュメンタリー映画を上回る奥崎謙三の強烈なエピソードを明かしている。執拗さ、強引さ、いやらしさ……。とは言え、被写体の元軍人であり、犯罪者でもある奥…

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