2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

人生巧者

俗世にまみれた純粋な青年の割り切れなさ。『カフェ・ソサエティ』(米国、ウッディ・アレン)は、愛の悲喜劇を軽妙に語って俯瞰するが、さりとて、そんな人生を全否定するわけでもない。滑稽な恋愛遍歴を堪能するのも、人生の巧者なのだ。

ヨーロッパの英雄

エロビデオとヨーグルト好き。せっかくの怪力もATMの強盗に使うだけというさえない男の孤独な日常物と思いきや、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(イタリア、ガブリエーレ・マイネッティ)は、後半からタイトルどおりのヒーローものに一変。燃え上がる車の中か…

愛すべき者

周囲が幸福をつかんでいくにもかかわらず、彼だけが置いてきぼりを食らう。 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(米国、ケナス=ローガン)の男の不器用さをとがめるべきではない。繊細で頑なな彼は、他者の傷心を代わりに引き受けた愛すべき存在なのだ。

ドラマの生まれる場

『やすらぎの郷』(テレビ朝日)は、倉本聰による円熟の脚本を従えて、名優がそろった。 テレビ人同士が俗世間を離れて集った理想の老人ホームも、住んでみれば、すったもんだは避けられない。 どこで暮らせど人間は人間。大勢集えば、必ず衝突。 だからこそ…

一枚の世界

何枚も見る必要はない。一枚の絵に世界が凝縮されている。 『ブリューゲル「バベルの塔」展』(東京都美術館)では、その一枚に、人が群がる。

時空を超えて

『PARKS パークス』(日本、瀬田なつき)は、世代の異なる人々の物語だ。舞台の井の頭公園や吉祥寺に、人の記憶や音声が集う。 時空を超えた場は、世界のあちこちにあるはずだ。

健康な作為

映画を撮ることを禁じられた監督が、タクシーと乗客とのやり取りというそれだけの設定で、コミカルかつ、スリリングで、しかも思いがけない展開に持ち込む。 作為的な映画に見せないようにしつつ、明らかに作為的な映画『人生タクシー』(イラン、ジャファル…

生きている者

孤独な演劇少女が亀と出会って、タイムスリップ。震災で消え去った演劇仲間と再会し、架空の台本の世界を再現する。渡辺源四郎商店の演劇、『鰤がどーん!』(ザ・スズナリ)は、そんな話だ。 劇中では、高校演劇のコンクールの同じ場面が繰り返される。同じ…

飛ぶカウボーイ

老いても宇宙飛行の夢を実現し、己のプライドを失わない。 人工衛星修復のために宇宙へ飛び立つ『スペースカウボーイ』(米国、クリント=イーストウッド)の頑固老人たちは、すこぶる迷惑だが、すこぶるかっこいい。 映画界のカウボーイこと、イースウッドは、…

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