生きている者

 孤独な演劇少女が亀と出会って、タイムスリップ。震災で消え去った演劇仲間と再会し、架空の台本の世界を再現する。渡辺源四郎商店の演劇、『鰤がどーん!』(ザ・スズナリ)は、そんな話だ。
 劇中では、高校演劇のコンクールの同じ場面が繰り返される。同じことが永遠に続くのは、一時、幸福であっても、やがては飽きるだろう。体験する時間は、同じものではない。少女は演劇を指導する教師になり、あるとき、一連の時間が彼女のために提供されたことに気付くのだ。
 今、存在している者も、かつて別の時間を生きていたかもしれない。彼女たちはどこから来て、どこへ行くのか。まだ生きている者は、知らずにいる。

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