2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

日記のように

唐時代の二人の風狂僧に想を得た『横尾忠則 寒山百得』(東京国立博物館:表慶館)は、日夜書き連ねた画が、日記のように、日付順に建物の隅々まで飾られている。西洋画や現代事象のパロディーのようなものも含め、緩やかな線で気ままに描かれた筆致からは、…

罪の認定

機密情報をリークした女と、家の内外で尋問するFBI捜査官。『リアリティ』(米国、ティナ・サッター)は、音声記録をもとにやり取りを再現した。捜査官は決して強圧的ではないが、それでも、執拗な追及によって、女は行為を認めてしまう。 リークの内容は、…

境界線

『月』(日本、石井裕也)の洋子は、重度障害者の施設で働いている。兼業作家でもあるが、小説が書けない。生活力のない夫や高齢の妊娠にも悩まされている。 同僚のさとは、聴覚障害者の彼女がいるし、施設でも紙芝居をつくっている。職務に熱心な青年だが、…

批評

「……褒める時には必ず感動がある。感情は分析できないものなんですね。感動が文章の中心にあって書こうとすると、感動自身は非常に言いにくいし、分析しがたい、文章っていう者がそこで生まれてくるんですよ。……分析的な論理じゃどうしても言い表せないもの…

開催まで

チャック・ベリーから、ジョン=レノン、ドアーズ……。1969年、トロンで開催された音楽フェスティバルでは、新旧の伝説的なロッカーが勢ぞろいした。『リバイバル69』(カナダ・フランス、ロン・チャップマン)では、彼らの熱いパフォーマンスを大画面で見れ…

歌声

ヒロインは孤独だが、信頼できる女友達がいて、協力してくれる仲間もいる。『キリエのうた』(日本)は、岩井俊二の総集編とも言うべきエッセンスが散りばめられるばかりか、震災の傷跡も、背景にある。 どこか風変わりな人間が程よい距離感を保っている限り…

ヨーロッパ

小さな村の出来事が追う州全土を象徴する。私生活の乱れた男は職場で暴力をふるい、貧しい住民は外国人労働者の排斥に乗り出し、教会の神父は異端者に冷淡だ。 『ヨーロッパ新世紀』(ルーマニア・フランス・ベルギー、クリスティアン・ムンジウ)は、環境運…

ゆとりのその後

すでにゆとり世代でさえ、旧世代である。8年前のドラマ同様、宮藤官九郎脚本による続編『ゆとりですがなにか インターナショナル』(日本、水田伸生)では、居酒屋の経営者以下、30代半ばの男たちが、労働環境やグローバル化にさらされて右往左往する。 人の…

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