2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

少子化対策からこぼれたもの

誰もが子どもを産み育てないと願っているわけではない。朝日新聞(4月23日)のインタビューで、イスラエルの社会学者オルナ・ドーナトは、同国の出生率の高さは、出産を義務と強いる抑圧に結びついていると話す。多様な声が封じられているが、母性だけが人間…

町の日常

病の診断を控え、不安を抱きつつ、パリの町をさまよう若いシャンソン歌手。低予算、短期撮影という制約のなか、『5時から7時までのクレオ』(フランス・イタリア、アニエス・ヴァルダ)でスケッチされた町の人びとの何気ない日常に、生きることの魅力がある。

聖地の感覚

町の浄化をうたって、娼婦を次々に絞殺する男。聖地である一方、女性差別の絶えない地で、女性記者が犯人の行方を追う。実在の殺人鬼をモデルにした『聖地には蜘蛛が巣を張る』(デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス、アリ・アッバシ)で、犯人は結…

殺す者と殺される者

妻を辱め、死に追いやった浪人。あるいは不義の妻をあの世に導かれて復讐の機会をうかがう浪人。両人とも、対決するのは、鍼医者とその相棒だ。『仕掛け人藤枝梅安2』(日本、河毛俊作)は、展開を急ぎすぎず、場面ごとに間合いを取ることで、殺す者と殺さ…

フィクションの輝き

新作が書けなくなり、妻ともすれ違うばかり。アシスタントや編集者ともぎくしゃくし、卑屈になった漫画家が休息を得るのは、女子大生の風俗嬢との時間にだけだ。浅野いにおの構築した原作は、いささか古風だが、竹中直人が監督した『零落』(日本)は、フィ…

人気政治家

成果の実態は問われない。やっている感だけが評価され、将来よりも目先のみが注目されるというのが、人気政治家だ。『妖怪の孫』(日本、内山雄人)の被写体は、岸信介の孫である。彼のような政治家を支持するのは、誰なのか。

不気味かわいい作品群

不気味かわいい絵柄の少女や動植物たち。『ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END』(森アーツセンターギャラリー)には、およそ1500点も及ぶ少女や動植物の作品が、館内の隅々まで飾られている。旺盛な創作力は、好みの是非を越えて、観る者にエネルギーをもたら…

夭逝の画風

30歳で夭折し佐伯祐三の画風は、ブラマンクに一括されて以降、変容した。『佐伯祐三-自画像としての風景』(東京ステーションギャラリー)に出品されたのは生前の代表作だが、彼がもっと長生きしたならば、更に別の画風に転じていたかもしれない。

アクセスカウンター