聖地の感覚

 町の浄化をうたって、娼婦を次々に絞殺する男。聖地である一方、女性差別の絶えない地で、女性記者が犯人の行方を追う。実在の殺人鬼をモデルにした『聖地には蜘蛛が巣を張る』(デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス、アリ・アッバシ)で、犯人は結果として死刑になるものの、行為自体を擁護する者も少なくなかった。貧困という事情があっても、娼婦は性と薬物に毒された汚れた存在であり、消されて当然と言う発想だ。

 妻や子供に愛され、仲間からも敬意を持たれる男が、夜な夜な女をバイクに載せ、室内で殺す。敷物でくるんで野外に捨て、新聞社に成果を報告する。翌日の記事を見て、ほくそ笑むというのが、男の日課だった。彼を家族や住人が支持するというのが、聖地の感覚なのだ。

     

 

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