2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

独自性の難しさ

オリジナリティーさえあれば、作品は必ずしも今の時代に評価されなくたっていい。十年くらい後に、必ず目利きの美術評論家や美術館が再発見し、マーケットにプレゼンテーションしてくれる。(村上隆談「生き残るのは独創性」『日本経済新聞』29日夕刊) もっ…

アナクロ映画

映画は作り物だ。画面をもっともらしく見せられるならば、少々チャチでもいい。 『僕らのミライへ逆回転』(米国、ミシェル・ゴンドリー)のマイクは、急遽、数時間で自主映画を作らなければならなくなる。勤め先のレンタルビデオ店のビデオ画像が、友人・ジ…

暴力的人間

暴力と罵声。『ワイルド・バレット』(米国・ドイツ、ウェイン・クレイマー)に出てくる人間たちは、いずれも異常にテンションが高く、破壊的である。 全編がそれだけならば、単なるバイオレンス・アクションで終わってしまうが、乱暴な主人公ジョーイの素性…

老いても夢を

夫に先立たれて無気力になった老女マルタが、友人に励まされて、若い頃の夢を実現させる。彼女の夢とは……。 『マルタのやさしい刺繍』(スイス、ベティナ・オベルリ)には、マルタと対照的に、娘に夢を否定されたショックからか、急死する友人も出てくる。 …

監視対象

現代は、あらゆる場所、すべての人間が、高性能装置の監視対象になりうる。 『私がクマにキレた理由』(米国、シャリ・スプリンガー、ロバート・プルチーニ)の子守役、アニーは、隠しカメラで雇い人に監視されていた。 カメラがどこに隠されていたかは、映…

死刑の現実

渡辺源四郎商店『どんとゆけ』(こまばアゴラ劇場)では、被害者の遺族が死刑囚に対面後、自ら死刑に加担する。刑を前にした段階で、もはや遺族には死刑囚の心情が見えず、死刑囚にも、罪への反省とか、遺族に配慮する余裕がない。そして、刑は、きわめて事…

無名数学者の夢

大学の同期生が花形物理学者として脚光を浴びる一方、自身は無名の数学者として鬱屈した日々を送る。そんな彼にできるのは、片思いの未亡人による殺人を隠すために、自らも殺人を犯してアリバイ工作に協力することだけだった。 『容疑者Xの献身』(日本、西…

家族の安息

家族とて他人である。それぞれ秘密をかかえている。お互いにすべてを知る必要もないし、知らないことで、拒絶反応を起こさずに、つながっていられる。 『トウキョウソナタ』(日本、黒沢清)の戯画化された家族は、互いの秘密を犯そうとすることで、崩壊しそ…

勘違いこそ芸術

画商には嘲笑され、娘や妻には愛想を尽かされ……。 『アキレスと亀』(日本、北野武)の芸術家の勘違いぶりを笑う観客は、少なくないだろう。 だが、勘違いがあるからこそ、芸術に打ち込めるのである。

共感の幅

金もある。地位もある。そんなセレブたちにも悩みがあるというのが、『セックス・アンド・ザ・シティ』(米国、マイケル・パトリック・キング)。 彼女たちの悩みは男関係だが、セレブでなくてもありそうなレベルのこと。彼女たちに共感する女性もいれば、そ…

想定内

10勝0敗を目指すのではなく、5勝4敗1分けでいい。そう考えたら気が楽になりました。(秋元康「仕事力」『朝日新聞』10月5日) 仕事でも人生でも全勝はありえない。失敗を事前に折り込んでおくのは、現実的な知恵と言える。 しかし、全勝を狙いたくなる。ある…

文明圏

アラスカまでは車や列車を使い、費用はファーストフード店のバイトで稼ぐ。森での獲物狩りには銃を駆使する。 『イントゥ・ザ・ワイルド』(米国、ショーン・ペン)の青年、クリスは、荒野の一人暮らしによって物質文明を否定したようでいて、文明圏から抜け…

のぞき社会

SVはプライバシー侵害ではないのかという声はサービス開始直後からあり、すでに米国では訴訟が起きている。カナダでは国内法にSVが抵触することを政府がグーグル側に事前通告しサービス開始を見送った。(瀬下美和「住民の不安・怒りにどうこたえる? Google…

あの世行き

生前に周囲から疎まれた者も、慕われたものも、死は共通に訪れる。 死者の身を清め、あの世へと送り出す納棺師は、電車やバスの運転手同様、乗客を選ばない。 『おくりびと』(日本、滝田洋二郎)は、納棺師という運転手の日録である。

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