2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧
デフォルメされた人体だけではない。『レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才』(東京都美術館)では、ウィーン世紀末の同時期に生きた画家の作品を並列することで、貧富や戦争、疫病に翻弄された繊細な芸術家の内面を浮き彫りにして…
同時多発テロ被害者への補償金分配に政府が着手したが、収入によって支払額が異なることに遺族の団体が異議を唱える。効率と現実性を優先させようとした弁護士は、遺族それぞれの事情を知るにつれ、器械的な数値分析では果たせない救済の不足点を知る。 実話…
オタール・イオセリアーニの『そして光ありき』(フランス・イタリア・西ドイツ)は、セネガルが舞台。森で昔ながらの暮らしをするディオラ族が、土地を開発者に譲渡し、都会に移住してからは、かつて崇拝の対象だった木彫りの神を露店で売り物にしてしまう…
ボカロもカバーもミュージカルもこなし、神田沙也加の歌い方は多様だ。追悼アルバム『LIBERTY ~memorial~』は、記念アルバムを入れ替えて再編集したものだが、声の美しさは、中毒を引き起こすだろう。
曖昧状態は、「未解決」の継続である。それはアフリカにおける直線の国境と同じだ。しかし戦争を繰り返して多くの人が血を流し、少子化がさらに進み、疲弊し続け、地球環境を汚染し、温暖化に拍車がかかるより、曖昧さに踏みとどまる方がずっと賢い選択であ…
「武力を何のために持つのかというと、それは主として他の国と喧嘩をするときのためでしょう。もし喧嘩するような相手がいるのであれば、喧嘩をする前に、まずはどうしたら仲良くできるのか考えてみたらいい」 靖国問題の根底にある戦争被害の認識、アヘン戦…
天才的なサックス奏者と、技巧にたけたピアニスト、努力家のドラマー。『BLUE GIANT』(日本、立川譲)は、古典的なジャズに挑む18歳のジャズメンが、まだ完成されていない頃の物語だ。映画の功績は、ジャズセッションの熱量と一体感を、アニメとして表現し…
余命わずかのシングルファザーが、幼い子どもを連れて、里親候補の家を訪ねて回る。『いつかの君にもわかること』(イタリア・ルーマニア・英国、ウベルト・パゾリーニ)のほとんどは、父と子どもが触れ合う場面だ。手をつないで歩き、共に遊び、状況の分か…