2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

歌の力

『ワイルド・ローズ』(英国、トム・ハーパー)が心を引きつけるのは、刑務所帰りのシングルマザーがカントリー歌手を目指して奮闘するという物語自体ではない。逆境を乗り越えるだけの説得力は、主演・ジェシー・バックリーの歌の力にある。

無名の人々

出発点は、橋の落下事故で亡くなったような無名の人々(本作では、少女の敬愛する漢文教師が犠牲になった)への思いだろう。『はちどり』(韓国・米国、キム・ボラ)は、1990年代の世相を取り込みながら、生き方を模索する少女の日常を新鮮な目で綴っていく。…

レミングたち

7月17日 道路の渋滞も海辺の混雑も、考えてみれば異常なことだったのだろう。心身を害しないことのほうが、よほどおかしかったのだ。 筒井康隆『幸福の限界』(『おれに関する噂』新潮文庫所収)には、幸福ごっこに酔いしれる家族が、人で一杯の海で泳ぐうち…

適度の時代劇

資金調達の手段は、もはや銀行だけではない。銀行員にしろ、証券マンにしろ、かつてほどの巨大な権限があるわけではない。続編となるドラマ『半沢直樹』(TBS)は、前作以上に時代劇調の演出が濃厚で、業務のやり取りも、現代とは、ややずれがある。だが、人…

軽い気分で

大学生カップルが、映画関係者に会えるという週末の体験をきっかけに別々の道を目指すことになる。『レイニー・デイ・イン・ニューヨーク』(米国)は、ウッディ・アレンらしい皮肉な恋愛コメディー。自身は出演せず、若い俳優たちに動きを任せたのは、正解…

銭ゲバの決着

病を治療する金がないために母を失った少年。金を盗み、敬愛する知人を殺し、一線を越えてからは、金にのみ執着し、邪魔な人間はいとも簡単に殺害していく。犯罪を重ねても露見することはなく、悪夢に脅かされるだけだ。 ジョージ秋山『銭ゲバ』(幻冬舎文庫…

選ばれなかった者

「気になったのは、小野泰助氏の躍進と、桜井誠氏が前回より6万票以上も票数を伸ばしているという事実だ」(雨宮処凛「宇都宮氏、山本氏らとの論戦がテレビで放映されていたなら」―『週刊金曜日』10日号) 現職の強い都知事選で小池百合子氏が連勝したのは、…

奇異に見えても

『サンダーロード』(米国、ジム=カミングス)の警官は、愛娘と接しているときを除けば、職務中も、人との対話中も、奇異なふるまいばかりしているかのように見える。そのように至ったのは、神経の繊細さ故だ。職業柄、数々の痛ましい現場を目撃したことも…

空間の評価

無秩序のまま、何代にもわたって引き継がれた空間。性差も上下関係もなく、変てこな住人同士の干渉もない。『ワンダーウォール 劇場版』(日本、前田悠希)で学生が職員たちに要求するのは、学生寮の存続だ。 投資効果からすれば、老朽化した寮はすみやかに…

アクセスカウンター