無名の人々

 

 出発点は、橋の落下事故で亡くなったような無名の人々(本作では、少女の敬愛する漢文教師が犠牲になった)への思いだろう。『はちどり』(韓国・米国、キム・ボラ)は、1990年代の世相を取り込みながら、生き方を模索する少女の日常を新鮮な目で綴っていく。

 濃厚なキャラクターが登場するわけでもなければ、過度な感情描写で盛り上げるわけでもない。映像がとらえ続けるのは、自分ではどうにでもできない周囲の世界に振り回されながらも、ささやかに生きていく人間の等身大の姿だ。

           f:id:mukuku:20200725093932j:plain

 

アクセスカウンター