2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

犯罪は必然

母の死によって、少年は、これまで疎遠だった祖母の家で暮らすことになる。明るく穏やかに見えた家族の実態は、犯罪集団であり、彼のガールフレンドを殺してしまう。 身内の釈放に協力したように見せかけながら、少年は復讐の機会を伺っていた。 『アニマル…

芸術の永続

私たちは常に、過去から未来に向けて橋を架ける役割を担っている。( パパ・タラフマラ、小池博史『ロング グッドバイ―パパ・タラフマラとその時代』青幻社) 大がかりな集団芸術では、ジャンルの制約以外にも、資金・環境など、様々な要素が公演のネックに…

神話

母の遺言に基づいて、死んだはずの父と兄を探す中東系カナダ人の姉妹。母の祖国で知ったのは、自分たちの出生にかかわる衝撃の事実だった。 『灼熱の魂』(カナダ・フランス、デニ・ヴィルヌーヴ)のグロテスクな話が普遍性を帯びているのは、古代の神話が下…

絶望する前に

現代の若者は不幸なのか? 日本という国がなくなったら困るのか? 古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)は、巷にあふれる若者論・国家論の盲点をあぶりだす。 僕には「日本が終わる」と焦る人の気持ちがわからないし、「日本が終る? だから何?…

越境

パパ・タラフマラの『島‐island』(森下スタジオCスタジオ)は、ガルシア・マルケスの短編『大きな翼を持った老人』をモチーフにしつつ、翼を男の妄想、彼を見守るのが少女を夢見る老女とし、両者の世界を交差することで、別の物語に仕立てている。 演劇と…

彫刻の置き場

ソファに腰かけ、テレビを見つめる男。輪になって手をつなぐ女たち……。 周りを魚が泳ぎ、足元には藻が生えている。 男も女も彫刻である。グレナダやメキシコの海底に沈められているのだ。 ジェイソン・デカイレス・テイラーの作品が飾られているのは、海の博…

インスピレーション

表現のきっかけは高尚なものではない。きわめて感覚的なものだ。 何かわからないけれど、これがおもしろそうだというインスピレーションが、まずあるような気がする。 理屈が先に入ってしまうと、ある意味では解けなくなるようなところがすごくあるように思…

セリフ

ドラマのセリフというのは、考え抜いて出てくるものでありません。考え抜かなければならないのは、言葉ではなく、それをしゃべる人間です。一人一人の登場人物をしっかり頭に入れて、その人物と共に生きてみて、まるで無意識の世界から呼び寄せるように、ふ…

力の世界

ある時期まで通用した手法も時代とともに合わなくなる。その時点で、方向転換するか、身を引けば、組織は改革できるだろう。 ところが、一度、地位を得た者は、おいそれと支配力を手放さない。過去のトラウマから、独裁制をいっそう強化する。 支配される側…

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