2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

猫の思惑

離婚間近の男女には、それぞれ愛人がいて、お互いの関係がこんがらがる。『猫は逃げた』(日本、今泉力哉)は、いかにも小品めいた設定だが、会話と場面転換が軽妙で、クライマックスで激突しても、どうにかこうにか、収まる。飼い猫は、彼らの間を行き来す…

終末期の過ごし方

戦争もなければ、貧窮があるわけでもない。『S高原から』(青年団)では、働かずとも療養所で優雅に暮らせ、一風変わった癖のある人間たちの日常が演じられる。下界から離れ、労働や結婚、家族との関係を断ち切り、気ままに生きているかに見えて、当人以外の…

軽さの魅力

30代独身者のたわいない日常、厄介な異性との三角関係、仕事での大失敗というだれにも思いあたる話題をちりばめつつ、日記やアイテムの使い方もこなれている。主演のコケティッシュな魅力に加え、どの場面も、奇異をてらわないのに、しゃれていて、退屈させ…

彼らは負けない

続編『SING シング ネクストステージ』(米国、ガース・ジェニングス)では、ローカル劇場で成功したミュージシャンたちが、大劇場でのミュージカルに挑む。彼らを馬鹿にした冷酷な経営者を見返す奮闘ぶりが、観る者を元気づける。

可視化されたもの

ただ発想を転換したり、表現技術に固執するだけのアート集団とは違う。『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』(森美術館)で一望できるのは、17年にわたる社会派プロジェクトの軌跡だ。都市であれ、震災であれ、原爆であれ、可視化されたものは、美術館内だけ…

神聖な戦い

徹底的に陰鬱であることで、『THE BATMAN ザ・バットマン』(米国、マット・リーブス)のサスペンスは、重みを感じさせる。尊敬していた親の秘密、都市の守護者である警察や市長の汚職……。それでもバットマンこと、ブルース・ウェインは、悪を見極め、身も心…

散った愛

不慮の事故で夫を失った未亡人と、彼女を愛し続ける男。互いに意識しながらも一線を越えなかった二人が、被害者の妹の法廷での証言によって救われ、晴れて結ばれる。『風と共に散る』(米国、ダグラス・サーク)は、ハリウッド映画の枠組みを踏襲するが、愛…

ゲテモノの本質

東京では3月まで開催された『楳図かずお大美術展』(東京シティビュー)。子ども目線での恐怖や世界観は、今日でも、みずみずしさを失ってはいない。ゲテモノ的な線画や派手な色彩から、事物の本質が見える。

少年の体験

北アイルランドの小さな町。町中の人々が顔見知りで、教会通いはもちろん、映画や音楽にも親しむ。貧しくても、異なる宗教の人々が、助け合って生きている。 『ベルファスト』(英国)の9歳の少年には、ケネス・ブラナー監督の体験が投影されている。仲の良…

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