2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

越境

長谷川孝治の作・演出による『祝/言』(新国立劇場)には、日中韓3カ国のアーティストが結集。日韓両家の結婚式が震災で消滅するまでの劇に、歌や踊り・写真でが色を添える。 劇の部分は控えめだが、圧巻は韓国の音楽グループ、アンサンブル・シナウィ。伝…

もらとりあむ

テレビを見て、漫画を読み、食べて、寝る。居心地がいいようで、よくはない。家事をしようにも、こだわり好きの父親がうるさいし、職を探そうにも、売り物がない。 『もらとりあむタマ子』(日本、山下敦弘)のヒロインは、厄介だが、共感を呼ぶキャラクター…

アニメを生む世界

アニメは、特殊な体験をもとに生まれるわけではない。異界を舞台にするにしても、同じことを繰り返す日常の観察から、変化するものとそうでないものとを感じ取ってこそ、世界の構築や描写に活かせるのだ。 『夢と狂気の王国』(日本、砂田麻美)のスタジオジ…

生死の境界線

ぼけることで見える世界もある。生死の境界線がなくなったとき、死者が目の前によみがえるのだ。 『ペコロスの母に会いに行く』(日本、森崎東)は、認知症の母と介護する息子の交流を、緩い演出で、ほのぼのと描いている。

存在意義

経済力の衰退した日本は、海外援助活動の停止を決定する。青年会協力隊の訓練所に赴任していた青年たちは、先のない状況の中、それでも自分たちの存在意義を問いつめていく。 時代や立場によって、援助とのかかわり方は異なるが、青年団『もう風も吹かない』…

時間の経過

夫が刑務所に入り、5年間、妻は一人で4人の子どもを育てる。ときどき面会しては、束の間の時間を楽しみ、出所を楽しみに待つが、いざ刑務所を出て、家族と暮らすことになった途端、夫は……。 劇的要素を排した『いとしきエブリデイ』(英国、マイケル・ウィン…

英雄を支えるもの

黒人初の大リーガー、ジャッキー・ロビンソン。 『42 世界を変えた男』(米国、ブライアン・ヘルゲランド)は、彼を主人公にしつつ、彼を支えるGMやチームメイトなど、周囲の生き様を描いている。 才能を認め、格差を変え得る余地が、永久欠番の英雄を作った…

追い込まれて

母を失い、新天地に引っ越した父と娘。喪失感から脱却できない二人は、土地になじめず、職を失ったり、いじめに遭ったり……。娘を失踪に追い込んだ同級生に、父は復讐する。 いかにも悲惨な筋立てだが、『父の秘密』(フランス・メキシコ、マイケル・フランコ…

すべて映画

『終わりゆく一日』(スイス、トーマス・イムバッハ)は、チューリッヒのスタジオ付近から見える15年間の風景と監督宛の留守番電話を再構成した私的フィクションだ。 顔を見せず、声も出さない撮影者の人生の変遷と家族や知人とのかかわりが、美しく先鋭的な…

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