2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

企画の知恵

番組の題材に規制が入るのは今に始まったことではない。 インタビュー「なぜNHKで「あんなドラマ」が作れたのか――?」(『週刊金曜日』27日号)で脚本家の早坂暁は、『天下御免』(1971年)ではアイヌ、『夢千代日記』(1981年)では原爆を取り上げたが、番…

テレビの二面性

テレビが健全でなければいけないという考えも、僕は大きな間違いだと思っています。テレビが人間を映す鏡ならば、人間の不健全なものも映し出すのがテレビです。品行方正であるべきだということはまったくない。そういう自覚を持ちながら、簡単に屈しない姿…

震災後の未来

チェルノブイリ、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ。そして、戦争。 木村朗子『五年後の震災後文学論』(『新潮』4月号)では、小説や映画をとらえ直すことで、歴史のなかでつながり合い、重なったものを見出している。いまだ消滅しない負の要素は、悲劇の誕生…

隠さぬこと

カドミ汚染の要観察地域に指定されながら、病気の存在を否定し、マスコミの取材を拒む対馬の住民たち。 鎌田慧『ドキュメント 隠された公害―イタイイタイ病を追って』(ちくま文庫)は、見るべきものを見まいとする人間心理と、人々をそうさせてしまう社会構…

ギャグとアート

旧作の批評、既成アニメのパロディー……。 何でもありの六つ子アニメ『おそ松さん』(テレビ東京、藤田陽一)は、原作者・赤塚不二夫の冒険的なギャグ精神を踏襲しつつ、センスのいいデザインで魅了する。 次にどんなスタイルになるのか、予測できないスリル…

森の出来事

一度は自死を決意した者の生還。救いをもたらしたのは、森に迷い込んだ謎の男だ。 『追憶の森』(米国、ガス・バン・サント)は、妻を失い、絶望して樹海を訪れた米国人が、再生を誓うまでの物語だ。 迷路のような森と、幸福のシンボルのような花。 シンプル…

復讐がもたらすもの

息子を殺された男が、西部開拓期の荒野を這いつくばって、仇を追う。 『レヴェナント 蘇えりし者』(米国、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ )は、男の執念を圧倒的な映像で見せつける。 主眼とするのは、強靭な精神でも、頑健な肉体でもない。罪び…

死者は揺らす

東日本地震の死者が時を超えて夢に現れる。姿を見せるのは、恋人だけではない。上演する演劇のモチーフとなった人物もだ。 『SHARING』(日本、篠崎誠)は、震災による傷を心理学的に描いたホラーだ。 生き残った人間に、死者がいつまで関与するのか。忘れら…

首相を知る

持ち上げるわけではない。といって、全面批判の側に立つわけでもない。 わかりにくい存在の首相が、いかなるタイプの人間で、どのような思考をしているのか。 青山和弘『安倍さんとホンネで話した700時間』(PHP研究所)は、まるで仕事仲間のように解説す…

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