2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

若い芸術家

最愛の夫を失いながら、80歳にしてなお、映画を撮り、前衛的なパフォーマンスも続けるアニエス・ヴァルダ。 自伝エッセイともいうべきドキュメンタリー『アニエスの浜辺』(フランス)は、いつまでも前向きで、しゃれっ気も失わないアニエスの、若々しく、り…

不況だからこそ

「不景気の時に本を読むのは、『これからどうすればいいのかな――』と考えざるをえなくなるからです。本というものは、人を立ち止まらせて考えさせるものだから、この目的にかなっているのです」(橋本治『大不況には本を読む』中公新書ラクレ) 国内の経済が…

タフな悪党

フランス人好みの反体制的性質を兼ね備えているとはいえ、徹底した悪党を主人公にすえて、観客をひきつけるのはむずかしい。『ジャック・メスリーヌ』2部作(フランス、ジャン・フランソワ・リシェ)の力強い演出は、そんな危惧を吹き飛ばす。 強盗、誘拐、…

執筆とアイデア

「書けば書くほど、書きたい本のアイデアが増えて、実は、百歳まで生きて、年に五冊ずつ本を出していっても頭の中にあるアイデアは全部書ききれないことがもうわかっております」(夢枕獏『本の雑誌』12月号掲載) 息を吐いた分だけ、吸う。酸素が多いほど、…

恋の気分

虚言癖があったり、不可解な行動をとる画学生ユジョン。そんな彼女に惹かれていく画家ソンナム。 妻のいるソンナムに恋心が芽生えたのは、妻のいるソウルを離れて、異国の地、パリに来たからでもある。 『アバンチュールはパリで』(韓国、ホン・サンス)に…

忍び願望

セキュリティーの厳重な現代では、他人の家に忍び込んで睡眠薬入りの砂糖瓶を置いたり、眠っている相手の爪にペディキアを塗るというような行為は難しい。 中年男を大胆に行動させた『アンナと過ごした4日間』(フランス、イエジ・スコリモフスキ)は、独身…

親のスタンス

殺人の被疑者となった我が子に親がどう対するか。世間の目と一緒になって糾弾するのか、それとも、別の可能性を見出そうとするか。 『母なる証明』(韓国、ボン・ジュノ)の母親は、少なくとも、世間主義に流れがちな日本の親とは、様相を異にしている。

貧困の時代

「日本人はアジアの片隅の小さな島国で、ずっと貧しさに慣れて、つつましいながら独自の文化を築き上げていた。貧しさが似合う国民なのだ」(岡崎武志『あなたより貧乏な人』メディアファクトリー) 旧時代の貧困と、現代の貧困とでは質が異なるだろうが、貧…

妊娠と出産

五反田団の『生きてるものか』(池袋・東京芸術劇場)では、死者が蘇り、死ぬ前の時間を再生。妻のお腹に夫が耳をあて、胎児の動きを確認する場面で終わる。 脚本は、旧作の『生きてるものはいないのか』同様に前田司郎だが、とくに男性作家の場合、女性の妊…

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