2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

やすらげぬ郷

『やすらぎの郷』(倉本聰・脚本、テレビ朝日)は、老いたテレビ人のための理想の施設が舞台だ。老人たちは、長生きした分、様々なしがらみを施設にまで持ち込み、戦争・病気・色恋沙汰など、ありとあらゆるものが、濃縮されて、ぶちまける。若者たちは、忠…

寓話を超えて

戦争で痛めつけられた村から、愛する女を連れて逃げた男の旅。『オン・ザ・ミルキー・ロード』(セルビア・英国・米国、エミール・クストリッツァ)は、寓話を超えた寓話劇だ。動物も色彩も音楽も、すべてがエネルギッシュで、悲惨な話でありながら、活力を…

戦場の流儀

敵としてのドイツ軍ではなく、ドイツ軍内部の勇士を描いた『戦争のはらわた』(英国・西ドイツ)。軍の論理ではなく、個としての価値観に徹した陸軍小隊の伍長は、孤高を貫くがゆえに、上官から嫌悪され、戦場に取り残される。決死の戦術で自軍に帰還しても…

宇宙人の贈り物

地球人に寄生した宇宙人による侵略と虐殺という特異な事態を除けば、『散歩する侵略者』(日本、黒沢清)は、ごく日常的なドラマである。宇宙人の襲来がなければ、倦怠期の夫婦も、心のすさんだジャーナリストも、愛に目覚めることはなかった。宇宙人は、多…

光の当て方

近年は癒し系家族ドラマに徹していた是枝裕和だが、『三度目の殺人』(日本)は、残忍な殺人犯のドロドロした法定劇だ。 証言を目まぐるしく変えて、弁護士を翻弄する男は、真の悪人なのか。被害者の遺族との関係を知るうちに、合理主義者の弁護士に迷いが生…

救うための戦い

『ダンケルク』(米国、クリストファー=ノーラン)は、ドイツ軍に追い詰められて孤立した英仏連合軍の兵士を、民間船の協力まで得て、英軍が救い出す。 命を捨てるのでなく、維持すること。西洋の健全な理念が、貫かれている。

中年の希望

妻の連れ子とはうまくいかず、職場では左遷。前妻との実子との再会もしにくくなる。 再婚後、理想の父親を演じようとした男が、『幼な子われらに生まれ』(日本、三島有紀子)では、次々と苦難にさらされる。 先送りするほどの時間はなく、開き直るには余生…

ゾンビと人間

『新感染 ファイナル・エクスプレス』(韓国、ヨン・サンホ)で、高速鉄道の中という逃げられない場所で、乗客が集団のゾンビに襲われるのは、もちろん怖いが、自分が生きるためにほかの乗客を犠牲にする男も、逃走した乗客を抹殺しようとする軍も,怖い。 …

滅びの遺伝子

『戦慄の記録 インパール』(NHK)からうかがえる現場指揮官の無謀さを非難することはたやすい。ただ、根底では、撤退して生き残るよりも、死して滅びることを好むという日本人の意識が働いている。作戦を指示する者も、従う者も、まるで失敗するために動い…

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