やすらげぬ郷

やすらぎの郷』(倉本聰・脚本、テレビ朝日)は、老いたテレビ人のための理想の施設が舞台だ。老人たちは、長生きした分、様々なしがらみを施設にまで持ち込み、戦争・病気・色恋沙汰など、ありとあらゆるものが、濃縮されて、ぶちまける。若者たちは、忠実に使えるものが肯定され、裏切る者は、馬鹿にされたり、ひどい目にあわされるだけだ。
 書きたいものを書きたいようにぶちまけ、おちょくり、深刻な話と笑える話を交互に織り交ぜて、129話分の長丁場を飽きさせず、ところどころで感動させ、酸いも甘いも踏まえつつ、老人にエールを贈るという倉本聰。いやらしいほどにうまい手腕こそが、老人の手ごわさだ。
 こんな老人たちが、これからどんどん増える。彼らを看取る者は、決してやすらげないのである。

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