2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

余裕の賞味期限

チェルフィッチュの主催者、岡田利規の演劇は、出口の見えないフリーターたちの生態がもっぱら描かれる。金もないし、はけ口もない。将来のことを考えると気が滅入るだけ。かくして、今をだらだらと過ごすしかなくなる。 それでも若いうちは、身体にまだ抵抗…

小説の成立

保坂和志の新作小説が発表されなくなって久しい。代わって、小説論たるエッセイを旺盛に執筆している。『小説の誕生』(新潮社)では、ハイデガー、カフカ、ベケットその他を取り上げつつ、刺激的な論考を展開し、小説について考えることの面白さを触発する…

使い捨ての若者たち

景気回復とやらで、新卒・第2新卒の採用は活発化しているが、それ以上の世代となると、まだ停滞しているようだ。ひと頃もてはやされた非正規雇用の人々が正社員になろうとしても、門戸は狭い。雨宮処凛『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)には…

寓話版素粒子

ミシェル=ウェルベックの原作小説を映像化するにあたり、『素粒子』(ドイツ、オスカー=レーラー)は、ヒューマンな要素を強調している。フェミニズム、フリーセックスなど、性革命の近代史を下敷きにする点は踏襲しつつも、映画はきわめて寓話的である。

バーホーベンのサディズム

『氷の微笑』の監督だけに、ポール=バーホーベンにはサディスティックな習癖がある。サスペンス大作『ブラックブック』(オランダ、ドイツ、イギリス、ベルギー)では、ナチスが拷問で顔を殴ってからレジスタンスを水に突っ込んだり、全裸のヒロインに大便…

スコセッシのアカデミー賞

『ディパーテッド』(米国)に斬新さがないのは、『インファナル・アフェア』(香港)の焼き直しだからでも、豪華キャストが見せ場をつぶしあっているからでもない。マーティン=スコセッシの提示した人種問題が途中で消滅し、組織内の権力闘争に矮小化されて…

アクセスカウンター