2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

天国の造形

下水掃除夫として、安アパートの最上階で暮らす男。乱暴な姉に追い出された少女をかくまったことから、二人に愛が芽生える。ささやかに結婚式を挙げたものの、まもなく戦争が始まり、彼の死を知らされる。本当は生きていたが、視力を失っていた。それでも、…

成果の共有

ロープなしで絶壁を上るアレックス・オノルド。ドキュメンタリー『フリーソロ』(米国、エリザベス・チャイ・バサルヘリィ、ジミー・チン)が見守るのは、ストイックなクライマーだけではない。恋人の存在や仲間の協力は、オノルドの励みになると同時に、精…

映像詩

『聖なる泉の少女』(ジョージア・リトアニア、ザザ・ハルバシ)には、泉が人をいやすと言う伝説が信じられるだけの神秘的な風景がある。まさに映像の叙事詩。

人生セラピスト

セックス・セラピストと言っても、際物ではない。深い見識はもちろん、身体の権利向上にも知見がある。ホロコーストで両親を失ったドクター・ルースは、2度の離婚を経験しながらも、勉強と相談活動を精力的に続けた。 『おしえて! ドクター・ルース』(米国…

天才の表現

天才ゆえの孤独感。家族にもパートナーにも仕事仲間にも、真に理解されたわけではない。『ロケットマン』(英国・米国、デクスター・フレッチャー)は、世界的ミュージシャン、エルトン=ジョンの熱い思いが、主演タロン=エガートンの見事な歌と演技で、画…

さびれた男

トリミングサロンを経営し、仲間や娘との交流で満ち足りているにもかかわらず、知り合いのチンピラに利用され、いっさいを失う気弱な男。『ドッグマン』(イタリア・フランス、マッテオ・ガローネ)の主人公は、見る者にいら立ちを与えるほど、優柔不断だ。 …

埋もれた個人

19世紀初頭のマンチェスター。活動家の演説を聞きに来た無防備な市民が、政府の騎馬隊に惨殺される。今日では、英国民でさえ、ほとんどが知らない事件の経緯にこそ、民衆のうごめく姿が残っている。 貧困改革を叫ぶ民衆も、安定統治に徹する判事も、個人個人…

正当化のための工作

生き埋めになった男の救出をわざと遅らせ、スクープ記事を書こうとたくらむ新聞記者。 『地獄の英雄』(米国、ビリー・ワイルダー)の工作は、個人ならば異様でも、国家ならば、ありうることだ。戦争正当化のために、わざと攻めさせて世論を操るといった具合…

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