2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

真実の歌

母の自殺やホームレス生活を経て、歌を詠み始めた鳥居。 苦心して覚えた字で綴ったのが『キリンの子 鳥居歌集』である。 どの歌にも、心情の虚偽はなく、切迫感がある。

受け手の問題

飴屋法水の戯曲『ブルーシート』(白水社)は、被災を題材にしつつも、題材の時事性に頼っているわけではない。 作り手には、いかなる対象をも昇華し、演劇として発芽させる強固な姿勢がある。 時事性にばかり、目が行くのは、受け手の問題なのだ。

何があっても家族

時代ごとに異なった家族を描き続ける山田洋次は、『家族はつらいよ』(日本)では、熟年離婚の危機に陥った一家の右往左往を描く。 相方が亡くなるのもつらいが、生きたまま別れるのも辛い。そんな皮肉をブラックユーモアで綴っているが、夫婦の決着は穏和な…

戦場としての金融界

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(米国、アダム・マッケイ)で描かれるのは、リーマンショックまでの異常な金融投資だ。 不自然な金融商品で抜け目なく稼げるのは、悪知恵にたけ、運に恵まれた者だけ。余裕のある富裕層ならば、損失を補てんできるが、…

広義の文芸

……僕は哲学であれ経済学であれ何でもやれる形式が文芸時評だと思っていました…… (「インタビュー 柄谷行人 批評にできること」『すばる』2月号) 文系の発想故にできることもある。

憎しみの背景

大雪で閉じ込められた店に、いわくつきの悪人たちが集まり、互いをだまし、殺し合う。 話の筋だけ取り出せば、『ヘイトフル・エイト』(米国、クエンティン・タランティーノ )は陰惨な活劇にすぎない。だが、将軍やら保安官やら黒人やら、憎悪劇に込められ…

開いた絵

うまく書こうとせず、書く喜びに満ちているビートたけしの絵には、観る者を窮屈にさせない開放感がある。 絵画や立体作品などが置かれた『アートたけし展』(松屋銀座)は、子どもの遊び場のように居心地のがいい。

記憶を届ける

ドキュメンタリー『“浦”によせる物語〜作家・小野正嗣を育んだ蒲江〜』(Eテレ)は、郷里の亡兄と芥川賞作家とのかかわりを紹介する。 だれの悪口を言うこともなく、純粋だった兄。彼とかかわった集落の人たち。 若者たちのほとんどは、土地を出ていくが、…

一次産業のグローバル化

観察映画『牡蠣工場』(日本・米国、想田和弘)から見えるのは、グローバル化で変遷する一次産業の実態だ。 現代では、重労働ほど、収入を得られるというわけではない。トータルの配分では、頭脳労働にかなわない。投資価値のある市場に向けて、効率的に人員…

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