2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

小説アート論

『煙滅』(ジョルジュ・ペレック、水声社)の書評(『朝日新聞』28日)で奥泉光が以下のように記している。 翻訳書『煙滅』は、……「い」段抜きの成約を訳文に課すという形で、原作に倍するとんでもなさを素晴らしく実現している。 そんなことをしてなんの意味…

不器用だからこそ

悪酔いして場違いの曲を歌い、新郎に絡んで、姪の結婚式をぶち壊す中年男。 『おとうと』 (日本、山田洋次)で笑福亭鶴瓶の演じる鉄郎は、初期の車寅次郎に通じるものがある。 後年の寅次郎は、多少の騒ぎは起こすものの、すっかり倫理的になってしまったが、…

抵抗感

土門拳が広島を撮った写真には、被爆者の生々しい傷が映っている。 この本にもし難点があるとすれば、抵抗感ぬきにはこの本の訴えを人々に伝えることができないということです。しかし、ここで一歩さがって、問題の焦点を見つめ直すと、問題はまた別の形をと…

未来へ

「私は何よりも未来に興味を持っていた。だが、はやって前に進もうとする志願兵はすぐに戦死したり、戦意を失ったりするものだ……」(アンジェイ・ワイダ、西野常夫他訳『アンジェイ・ワイダ 映画と祖国と人生と』凱風社) 先へ行きたいほど、ゆっくり歩く。

負けざる者

白人政権によって27年間も獄中生活を過ごす羽目に陥ったネルソン・マンデラ。それでも、大統領就任後は、白人の官邸職員もラグビー代表チームに対しても、友好関係を保ち続けた。敵対からは何も生まれないことを知っているのだ。 『インビクタス 負けざる者た…

小説の読み方

「絶対正しい読みなんて、ないんです。作家自身がやったって絶対正しくはないと思う。小説ってそんなに貧しいものじゃない。少なくともいい小説は」(豊崎由美談『本の雑誌』3月号) いい小説ほど、読み方は多様だ。

歴史の捉え方

カティンの森でポーランド将校が大量虐殺された事件。犯行の首謀がドイツではなく、ソ連だったという事実を、ソ連の衛星国であるポーランドは、長年伏せていた。 父親を虐殺されたワイダは、『カティンの森』(ポーランド)を犠牲者一家のヒューマンドラマに…

海の映像

海に生息する魚や動物は、自分自身の世界を映像で俯瞰することはできない。しかし、我々は、映画館の大画面によって、壮麗で、スリリングで、迫力ある世界を見ることが可能だ。 『オーシャンズ』(フランス、ジャック・ペラン、ジャック・クルーゾー)の映像…

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