2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

世界の体験

ナチのホロコーストを逃れた少年にとって、疎開先もまた、安住の地ではなかった。モノクロの映像詩『異端の鳥』(チェコ・スロバキア・ウクライナ、バーツラフ・マルホウル)は、旅路の試練が、悲惨なエピソードの連続によって語られる。差別、暴力……。少年…

ドラマの成立

現代版『街の灯』こと、『きみの瞳(め)が問いかけている』(日本、三木孝浩)は、視力を失った女と、刑務所上がりの元ボクサーの恋物語。設定が難しく、薄っぺらな感傷ドラマにもなりかねないが、丁寧な作りで好感の持てる出来になっている。

逮捕が可能だった時代

『刑事コロンボ 野望の果て』では、投票日間近の上院議員候補が、愛人との別れを強要する選挙参謀を殺害する。策におぼれるあまり、最後は墓穴を掘る分、視聴者は救われるだろう。 今日では、開き直って虚偽を続けたり、罪の自覚さえないまま、堂々と表舞台…

生きるための記憶

特別養子縁組にかかわった人々それぞれの事情。『朝が来る』(日本、河瀬直美)の主軸は、ミステリー的な筋立てではない。そうならざるを得なかった心の振動。思い出に刻まれた光景。彼女たちが生き続けるための記憶が、映像として残されているのである。

「改革」を唱える者

イデオロギーでもなければ、理念でもない。佐々木実『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(講談社)でレポートされた人物が目指すのは、強い者のみが富と力を得る制度の普及だろう。行動原理には、現代の政治家トップ、あるいは一部の政治コメン…

最後までサスペンス

作品ごとにがらりとタイプを変える深田晃司。『本気のしるし 劇場版』(日本)は、漫画が原作の連続ドラマを劇場版に編集した。地味なサラリーマンが、踏切事故に遭いそうな女を救ったことからサスペンスが始まる。不可思議で謎めいた女に振り回されるが、彼…

彼女たちの星

部外者にとっては異質に見えても、信じている当人にとってみれば、とても切実なことかもしれない。『星の子』(日本、大森立嗣)の両親にとって、幼い娘の命を救った水は、信じるべきものであり、生きる糧だった。長女に愛想をつかされ、伯父や教師に否定さ…

制度を利用する側

『薬の神じゃない!』(中国、ウェン・ムーイエ)の薬屋店主は、安価な薬を密輸して、貧しい患者たちに売っていた。当局に見つけられて逮捕されるが、彼に救われた大勢の患者たちが、警察の車に乗せられた恩人を見送る。 制度改定前の実話である。当時は、認…

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