2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

人間の存在

青年団『アンドロイド版 三人姉妹』(吉祥寺シアター)では、ロボットが役者としてだけでなく、戯曲の展開上も、重要な役目を担っている。ロボットゆえに、忘れていない記憶。場をわきまえずに発してしまう言葉が、その場の人間たちに亀裂をもたらす。 ロボ…

外部

戯曲を進行させていくには、それが空間であれ、時間であれ、「外部」もしくは「他者」の存在を導入できる状況を用意することが必要なのである。(想田 和弘『 演劇 vs. 映画――ドキュメンタリーは「虚構」を映せるか』(岩波書店) 内輪だけの会話ならば、外…

紛争の構図

世界的建築家の設計した邸宅に住むデザイナーが、隣人の奇行に悩まされる。 『ル・コルビュジエの家』(アルゼンチン、ガストン・ドゥブラット、マリアノ・コーン)の隣人は、なれなれしくて鈍感。対するデザイナーも、尊大で嫌味な人物だ。 壁の穴開けをめ…

小説を牽引するもの

ある時、小説に何かの動きがあると、描写以外の豊かさがもたらされることに気が付いたんです。その「何か」がドラマであってもいい。物語に小説が支配されるのは嫌だから物語、ドラマそのものを書こうとするのではなくて、物語あるいはドラマと呼ばれるもの…

自分が主役で、自分が最後に殴りこんだりすると、映画がすごい小型化して、単なる主役とその周りに付随した奴のストーリーになるんだけど。主役を薄くしちゃって、周りを広くすると、映画自体が大きくなるっていうかね。(北野武『物語』ロッキング・オン) …

終えるために

ストーリーができる。ネームが入る。だが、これから膨大な量の絵を描かなくてはならない。 枚数の多い原稿を見て、漫画家は不安になる。 アシスタントからアドバイスを受ける。 「ただひたすらかいていればいつか終わることですよ」 一週間ほど、書き続ける。…

実作の持続性

「これを撮ったら死んでもいい」なんて思ったら、荷が重すぎて精神的にもビジネス的にも必ず行き詰まってしまう。むしろ「とにかく進めば、その先のステップがある」くらいに考えたほうがいい。未来における作品の精度よりも、未来のために自分の今を大事に…

牡蠣フライ

自分自身について書くのは不可能であっても、例えば牡蠣フライについて原稿用紙四枚以内で描くことは可能ですよね。だったら牡蠣フライについて書かれてみてはいかがでしょう。あなたが牡蠣フライについて書くことで、そこにはあなたと牡蠣フライのあいだの…

テロの代償

国際テロリスト、カルロス。大義名分のもと、世界中で過激な活動を続けた。 活動、飲酒、セックス。『カルロス』(フランス・ドイツ、オリヴィエ・アサイヤス)で描かれる彼は、苦悩のあとを見せない。 だが、実演された肉体の変貌ぶりは無視できない。過度…

アクセスカウンター