2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

小説の未来

『ダ・ヴィンチ』1月号でのインタビューに対し、村上春樹は答えている。 現在の社会は小説家が『文学です』『小説です』と、高見に立って安閑と構えていられる状況にはないし、他の表現形態と同じレベルで真剣に切り結んでいかないと、アクチュアルな表現形態…

心の掃除

実際の自分の部屋の掃除は、家に帰らなければできませんが、心の部屋の掃除は、電車の中でも、オフィスでちょっと休憩しているときにも、黙々と歩いているときにもできます。(松浦弥太郎『あたらしいあたりまえ。』PHP) 部屋以上に、後回しにしがちな心の…

コミュニケーション

青年団の演劇『カガクするココロ』(こまばアゴラ劇場)では、自殺未遂をささやかれた女性研究員が、久しぶりに研究室に出てきた際、手首のサポーターが偽装ではないかと男性研究員が示唆する。 直言を暴言と受けとる同僚もいる。だが、彼女にとって、目の前…

小説は袋小路か?

「私の考えでは小説は完全に袋小路に入っています。小説に関連した、きわめて大胆かつ興味深い実験のすべての――例えば、時間軸の移動というアイデアや、異なる人物たちによる語りというアイデアの――行き着くところは、小説はもはや存在しないとわれわれが感…

音楽の街

吉祥寺の夜の商店街。シャッターの下りた店の前には、音楽を奏でる路上ミュージシャンの姿がいくつもある。 ドキュメンタリー『ライブテープ』(日本、松江哲明)でも、神社の前や商店街を歌いながら歩くミュージシャンの姿が映し出される。 ミュージシャンに…

贖罪

情報収集と侵略が目的だった地球人が、衛星の先住民に共鳴し、ついには彼らと同じ姿のまま生涯暮らすことを決意する『アバター』(米国、ジェームズ・キャメロン)。 この映画には、米国の植民地主義に対する贖罪意識が根底にある。

個と全体

横浜美術館で企画展『束芋 断面の世代』が開催され、図録の巻頭に束芋がこんな一文を寄せている。 「団塊の世代」に対して私の世代(大雑把に1970年代生まれ)を「断面の世代」と勝手に名づける。…… 大きな塊になることによって、世の中を大きく動かし、後の…

敵ながら…

1930年代のヒーローとはいえ、ジョン・デリンジャーは銀行強盗であり、社会の敵ナンバーワンと評された男だ。 『パブリック・エネミーズ』(米国、マイケル・マン)は、余分な感傷を一切排除して、この悪漢の犯罪と逃亡歴をひたすら追う。恋人ビリーとの愛でさ…

三角関係

老いた牛にひたすら愛情を注ぐ農夫。それだけなら、『牛の鈴音』(韓国、イ・チュンニョル)は、単純な人情ドキュメンタリーに終わるだろう。 だが、自分ではなく牛ばかりかわいがるだの、機械を使えば楽なのになぜ買わないだのと、農夫をひたすら罵倒する妻…

楽園を目指して

ビル工事で、すみかを追われた虫たちは、頂上を目指してビルを登る。てっぺんに楽園があると信じていたのだ。はたして、願いはかなうのか。 フライシャー兄弟のアニメ『バッタ君町に行く』(米国)が公開されたのは1941年。真珠湾襲撃の直後だった。

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