2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

運命の差

ベトナム戦争を背景にした青春の栄光と終焉。 無邪気なロシア系の若者がロシアンルーレットによって狂わされていくという『ディア・ハンター』(米国、マイケル・チミノ)の悲痛な群像劇は、米国の夢の盛衰でもある。 過去を脱却できた者もいれば、過去にしが…

映画は続く

映画を熟知した者が、演出も画づくりも細部まで丁寧に仕上げている。 旅館の男女の距離間を綴った『3泊4日、5時の鐘』(日本・タイ、三澤拓哉 )は、技芸とセンスを感じさせつつ、これ一本で終わらない永続的な世界の構築を予感させる。

成果のために

コソ泥で日銭を稼ぐ男が這い上がる手段は、テレビ局に事件映像を売り込むことだった。 『ナイトクローラー』(米国、ダン・ギルロイ )のカメラマン、ルイスは、衝撃映像を手に入れるには、非合法手段でさえ、いとわない。被害者の惨状に目をつぶり、仕事仲…

記憶と堕落

戦後の堕落は結局のところ持続しなかった。集団はその後も暴走する。過ちを繰り返す。なぜならこの国は記憶しない。絶望しない。堕ちない。ぎりぎりのところで新しい曲で踊り始める。(森達也「深い絶望と共に考え続ける」(『週刊金曜日』9月18日) 正確に…

戦争的なもの

直接の銃撃戦を味わっていないにしても、国や民族との対決は、あらゆる分野で勃発しているものだ。 戦後世代は、生まれながらにして、戦争的なものを体感しているにもかかわらず、いま生きている時代が平和だと思い込まされただけなのである。 『機動戦士ガ…

文化の発掘

たいていのブームは一過性のものであり、定着することは期待できない。だが、停滞したかに見える分野が、一時的にせよ、活性化することは望ましいことである。衰退と繁栄を繰り返すことで、文化は継続できるからだ。 つまらないと思われたものが、つまらなく…

快楽の生きもの

『平成狸合戦ぽんぽこ』(日本、高畑勲)が見るたびに味わいを増すのは、環境の変化を普遍的に描出しただけではない。土地を追われ、自由を奪われたかに見える狸たちが、いかなる状態においても、能力に見合う形で、それぞれのポジションにおいて生き続けて…

万年漂流社会

老後イコール悠々自適という構図は、とうに崩れている。健康・財力・人間関係に恵まれていない限り、優雅な隠遁生活どころか、暗澹たる晩年を過ごす羽目になるのだ。 NHKスペシャル『老人漂流社会「親子共倒れを防げ」』では、親子同居が相互扶助どころか、…

日本の抑制手段

集団のリアリズムに徹した1967年製作の岡本喜八版。阿南陸軍大臣と昭和天皇の心情をとらえた2015年の原田眞人版。1945年8月15日の戦争終結を伝える新旧2本の『日本のいちばん長い日』(日本)は、玉音放送が流れるまでのてん末を再現している。 敗色濃厚の現…

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