2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

炎の青春

『アオイホノオ』(テレビ東京)の舞台は、1980年代の大阪芸術大学。漫画家やアニメータを目指す若者たちの熱き日常が、コミカルに描かれる。 過剰な自信と繊細なコンプレックス。漫画家志望の焔モユルが取りつかれた妄想の浮沈をだれが笑うことができよう。…

文学の概念

文学の概念そのものにしても、詩、小説、劇、文芸評論だけを文学と考え、文学史の対象をその範囲に限定するのは、おかしい。パスカルは詩人でも小説家でも劇作家でもないが、むろん文芸評論家でもないが、フランス文学史に特筆大書されています。(加藤周一…

記憶されるもの

禁じられる物ほど、人は欲し、身の危険を感じてさえ、あらゆる手段を用いて守ろうとする。 『華氏451』(英国・フランス、フランソワ・トリュフォー)で守られるのは、書物だけではない。人の感情を揺るがす事物、いわば自由を守るための抵抗や、先人の遺産…

ワインのごとく

スイスの孤独な教師が、女の残した古書をきっかけにリスボンを訪れる。著者の数奇な運命をたどりながら、新しい出会いに目覚めていく。 『リスボンに誘われて』(ドイツ・スイス・ポルトガル、ビレ・アウグスト)の構成は、オーソドックス。オーソドックスで…

母の授けたもの

母の恋を知ることは、娘であるサラの出生の秘密を明らかにすることでもあった。 サラ・ポーリーのセルフ・ドキュメンタリー『物語る私たち』(カナダ)は、家族や知人から証言を得ることで、生前の母に秘められた真実をあかるみにする。 冷徹な告白録にはな…

楽しさの保護

何がどうしても必要で、何がそれほど重要でないか、あるいはまったく不要であるかを、どのようにして見極めていけばいいのか? これも自分自身の経験から言いますと、すごく単純な話ですが、「それをしているとき、あなたは楽しい気持ちになれますか?」とい…

敵に学ぶ

政権交代をめぐる国民投票で世論を変えたのはTVCMだ。独裁政権に立ち向かうため、広告ディレクターが使ったのは、敵陣の手法を逆手に取った未来志向型のCM。現政権による虐待を批判するよりも、あえて資本主義世界を肯定し、バラ色のイメージを押し出したの…

任せる相手

身に覚えのない罪での投獄。言葉もわからない地で、大使館の協力もなく、虐待される主婦。子どもにも、夫にも、もう会えないのか。 『マルティニークからの祈り』(韓国、パン・ウンジン )は、実話が題材だ。大使館や現地弁護士に任せても、なんの進展もな…

世界の見え方

闇夜に浮かぶ漁船の光。船上に投げされ、荒っぽくさばかれる魚群。 超小型カメラで拡大される『リヴァイアサン』(米国・フランス・英国、 ルーシァン・キャスティーヌ=テイラー、ベレナ・パラベル )の映像は、我々の生きる地球の存在が、視点によって、い…

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