2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

生きるのは卑怯か

戦時に生き延びようとする特攻隊員は、卑怯なのか。 だれもが、卑怯と感じていたわけではない。 佐藤忠男は、「映画が描いた戦争」(日本経済新聞:29日夕刊)で、自分が山崎貴『永遠の0』の熱っぽい悲壮美からは遥かに遠い所にいたと述べている。 不合理な…

運命の皮肉

秘密警察員の夫に愛情どころか、恐怖心しか、抱いていなかった妻。エリートの彼が窮地に陥ってから、ようやく愛情を感じる。 社会的身分と私的幸福が一致するとは限らないが、『チャイルド44 森に消えた子供たち』(米国、ダニエル・エスピノーサ)でスター…

男子が主役

教え方を知らないバケモノと、育てられることを知らない人間の男の子。 『バケモノの子』(日本)は、父子のような師弟が異界を行き来して、お互い学びあって成長する。 ファンタジーと日常の幸福な結合。男子が主役でも、細田アニメのワクワク感と心地よい…

人間の信仰

ベルイマンばりのシニカルな会話と衝突。 『雪の轍』(トルコ・フランス・ドイツ、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン)は、いやらしさ、醜さをさらけ出すが故に、人間のリアルな姿が見える演劇風のドラマだ。 名誉も財力も備え、美しい妻と良き友人に恵まれた男でさ…

傷の癒し方

子ども時代の心の傷は生涯、負い目になる。 もし癒すとしたら? 方法は難しいが、単純だ。 『きみはいい子』(日本、呉美保)では、甥に癒された新米教師が、教え子の小学生に方法を伝授する。 家族の誰かに抱きしめてもらうこと。それだけのことだった。

人間力

『フレンチアルプスで起きたこと』(スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー、リューベン・オストルンド) リゾート地での冷たい行動によって、妻子からの信頼を失う男。 夫婦の亀裂は、他の旅行客にも波及するほど深刻になるが、救ったのは弱さの…

神の逃走

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(米国、ジョージ・ミラー)に半端な人間ドラマはない。獰猛な人間たちの戦闘だけをひたすら映し出す。 近未来の逃走劇に徹したことで、神話的な世界がよみがえるのだ。

つなぎ目

戦争は、青春の喪失であり、体験の継承であり、肉体の酷使であり、記憶の想像である。 マームとジプシー『cocoon―憧れも、初戀も、爆撃も、死も。』(東京芸術劇場)には、戦時と平時のつなぎ目がある。

家の時間

母の異なる妹を含む4人の姉妹が、鎌倉の一軒家で暮らす。 『海街diary』(日本、是枝裕和)は、柔和な光の下、彼女たちが地元の健康的な食を楽しみ、それぞれの価値観において進路を選択する。 父の死も、母との再会も、自分を持っている彼女たちを揺らがせ…

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