人間の信仰


 ベルイマンばりのシニカルな会話と衝突。
『雪の轍』(トルコ・フランス・ドイツ、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン)は、いやらしさ、醜さをさらけ出すが故に、人間のリアルな姿が見える演劇風のドラマだ。
 名誉も財力も備え、美しい妻と良き友人に恵まれた男でさえ、すべてが順調なわけではない。彼自身も、彼の周囲も、心に何事かを秘め、相手を意のままに操ろうとしている。
 善意と悪意。すべてを知ったからと言って、相手を見離すわけにはいかない。
 互いの関係が見せかけであっても、つながっている。つながっていかなければやっていけないのが、人間の不条理であり、信仰なのだ。

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