2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

おかしな兄妹

失業した兄が、自閉症の妹に売春させて、生活費を稼ぐ。『岬の兄妹』(日本、片山慎三)は、どん底にあっても、『道』のような悲哀ではなく、なりふり構わぬ純朴さゆえのおかしみがある。

理想の友情

上品な主人が黒人、がさつな運転手が白人。実話とは言え、設定が既成の映画とは逆だが、『グリーンブック』(米国、ピーター・ファレリー)は人種や身分を超えた友情物語となっている。世間の冷たさとは、かけ離れた善意の物語だが、理想の見心地は悪くない。

シンプルに見えても

劇映画の前座にすぎぬ短編アニメ。猫とネズミの追っかけ子という使い古されたアイデア。『トムとジェリー』が反響を呼び、たちまちシリーズ化できたのは、ウィリアム=ハンナとジョセフ=バーベラという二人のアニメーターによるアイデアに満ちた演出と卓越し…

サイボーグの実演

漫画と特撮映画との幸福な出会い。『アリータ バトル・エンジェル』(米国、ロバート・ロドリゲス)は最先端の才能の結集で、サイボーグ少女の目覚めと格闘を、緊迫感たっぷりの展開で実写化した。生身とサイボーグの境界線は、近未来では消滅するだろう。

生涯俳優

90歳を超える現役俳優、織本順吉。さすがに体力の衰えから、セリフを忘れたり、主演作を断らざるを得なくなる。家族の前でかんしゃくを起こしたりする。 2本組のドキュメンタリー『老いてなお 花となる』(NHK)で織本が見せるのは、撮影者が娘だからこそ見…

途上段階の絵

コルビュジェの芸術は、抽象画の段階で完結しているわけではない。建築に作り上げて、ようやく完成するのだ。

走る画家

寝る間も惜しんで各地を旅し、絵を描く現代画家・瀬島匠。情熱の源泉は、青年期に亡くした弟たちへの思いだった。 教え子たちを始め、誰をも元気づける奔放さと、創作姿勢に一貫する家族とのつながり。『ぼくの好きな先生』(日本、前田哲)は、キャンバスの…

遠からず

暴動を疑われ、関東大震災時に虐殺された在日朝鮮人たち。五輪開催前に追悼の木を植え直そうと、市民が神社に集う。 燐光群『九月、東京の路上で』で、演者たちのたたみかけるような語りによって明かされる幾多のエピソード。今日の観客は、遠い日の出来事と…

緊急ドラマ

緊急通報室のオペレーターが家庭内殺人事件を知って、解決に奔走する。『THE GUILTY ギルティ』(デンマーク。グスタフ・モーラー)の大半は電話のやりとりだが、音と映像が実に効果的であり、役者を始め、プロのスタッフだからこそ、編み出せるサスペンスだ…

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