2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

声を届ける

報道もされ、本でも公表された。被害者の一人である女優が実名で登場し、ブラッド・ピットらが製作に関与する。映画界の大物プロデューサーの性的暴行を映画人があえて映画にした。『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』(米国、マリア・シュラーダー)の…

映画音楽の名匠

映画音楽の地位が、まだ低かった時代、クラシックの作曲家でありながら、映画に多くの時間を割き、作品ごとに、最適でありながら、実験的だった。エンニオ・モリコーネは、既成の曲に頼らず、独創的な曲を作り続けた。 曲が目立ちすぎるのは、映画にとって、…

名著を語る

過去の脚本であっても、演劇は常に同時代である。演出家は、現代性を意識したうえで解釈し、新鮮な作品として観客に提示する。明治から昭和にかけての文学の紹介者としても、演出家であり、劇作家でもある平田オリザが務めたのは、適任と言えよう。 劇作家と…

香港のアクション

力感と華麗さ。芸術とも言うべき香港映画のアクションは、京劇に源流を持つ。ブルース=リーの登場以降は、リアルさも兼ね備える。『カンフースタントマン 龍虎武師』(香港・中国、ウェイ・ジュンツー)は、サモ=ハン、ドニー=イェンら、レジェンドの証言…

耳を澄ます

超絶技巧的な速さに頼れば、ピアノの音は打ち消されるのみだ。『坂本龍一 Playing the Piano in NHK & Behind the Scenes』(NHK総合)では、一音一音を、ゆっくりと奏でる。風や雨音に、耳を澄ますときのように。

現代の時代劇

宮藤官九郎脚本の時代劇『いちげき』(NHK)は、小説『幕末一撃必殺隊』とコミックが原作だ。薩摩藩士の御用盗に対抗するため、幕府の密命で集められたのは、刀を握ったことのない農民たち。武士でなく、農民を主役にすることで、既存勢力を相対化する視点が…

注目率

ワールドカップサッカーや五輪、箱根駅伝などの人気スポーツが上位を占める中、『第73回NHK紅白歌合戦』は、2022年の個人視聴率で2位に浮上。各世代に目配りしつつ、相応に人気や評価を得た歌い手を揃えた。加山雄三・安全地帯・松任谷由実など、裏番組を凌…

旅の時間

不治の病に侵された男が、中国の兄を連れて、日本の柳川に宿泊する。その地は、20年前に恋焦がれた女が暮らしていた。 男女3人のやりとりと街の風景を映す『柳川』(中国、チャン・リュル)では、劇的な衝突もないまま、ゆったりと時間が流れていく。旅その…

猫の移住

マンモス団地に暮らす猫たちが再開発で居場所がなくなった。ボランティア団体が猫を手なずけ、安全な地への移住作戦を実行する。『猫たちのアパートメント』(韓国、チョン・ジェウン)の主役は、猫と女性たち。効率化では推し量れない触れ合いの過程が、心…

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