2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧
本は――わたしたちが生まれるはるか前に出版されたものも含めて――年をとらない。本は現実の時の経過を記録している。またそれを読んだときのことをわたしたちに思いださせるので、過去の何十年かの流れを映しだしているともいえる。(アン・ファディマン、相…
死に場所を求めて人里離れた地にたどりついた男が、先住民族の老婆と異色の関係を結ぶ。 『ハポン』(メキシコ・ドイツ・オランダ・スペイン、カルロス・レイガダス)は、キアロスタミ風の物語が、衝撃の展開に突進する。圧倒的な映像美を含め、これぞ映画と…
人生の重荷を背負う者たちが、山小屋暮らしを通じて心身をときほぐしていく。 『春を背負って』(日本、木村大作)の物語はシンプルだが、爽快な人間賛歌に嘘くささはない。立山連峰の風景や演出に、ごまかしがないからだ。 山上生活は危険と向かい合わせだ…
豪華スタッフとキャストを揃えたSF映画大作『DUNE』は、映画会社の出資を得られず、幻の作品となった。 アレハンドロ・ホドロフスキーの構想した綿密な企画書は、後年のSF映画に多大な影響を与えた。映画史に残る傑作の元ネタとなり、企画が無駄でなかっ…
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(米国、コーエン兄弟)は、売れない歌手の生き様を地味に映しつつ、一場面一場面を深く印象付ける。 だれとも無関係なようで、だれにでも重なる男のどうしようもない日々。 男の奏でる繊細な歌が、耳…
気ままなOL生活を捨て、地質学や水泳を習得。すべては、水没した大金を回収するためだったが、学校も水泳スクールもやめ、ランジェリーパブで働いたり、ロッククライミングコンテストで活躍する。 最初の目的は、どこへ? 目的からずれるのも人生だ。そも…
美しい自然に囲まれた妻子との幸福で刺激的な生活が、赤い牛男の訪れによって、唐突に破壊される。 『闇のあとの光』(メキシコ・フランス・ドイツ・オランダ、カルロス・レイガダス)は、魅惑的で危険な映画である。 断片的な場面も、変容する人間も、すべ…
前の戦争だって「さあ人殺しを始めましょう」と音頭をとった人はいないでしょう。「爆弾が降ってきますよ」とも「兵隊は手足がちぎれて血が出ます」とも、たぶん最初は言っていない。平和のためだし国民を守るためだし聖い戦いなのだから。我々がサギにかか…