2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

リスク評価の犠牲

「最悪の事態にどう対応するか?」という考え方をしないのは、日本人の国民性である。「プランAが失敗したら」という仮定そのものを一種の「呪い」のようにみなすのである。……日本人はすべての災禍についてリスクを過小評価する傾向にある」(内田樹『言霊の…

真似と個性

「できない」ということこそが、おそらく個性なのです。真似から入るしか入りようがない。真似したくても真似られないまま作品を作りつづけると、いつしか評論家の方々が個性を指摘してくれます」(黒沢清談:金子遊『ワールドシネマ入門』コトニ社) あまりに…

戦後のうちわ

戦争体験者の戦後は、平時であっても、夫婦の倦怠期があり、会社のストレスがあり、子どもや知人の死がありと、決して平穏ではない。『早春』(日本、小津安二郎)で心の変動に呼応するかのようにたびたび登場するうちわは、無言でありながらも、生きることの…

犠牲者の記録

新聞社勤務時代に反右派闘争に巻き込まれ、苦難の人生を歩んだ鳳鳴。『鳳鳴(フォンミン) 中国の記憶』(フランス・中国、ワン・ビン)は、名誉回復までの30年をよどみなく証言する彼女の姿を3時間、照明や位置を微妙に変えながらも、ひたすら映し続ける。壮…

名作のカメラ

どの人物の視点か。人間から見るのか、人間を俯瞰するのか。『レオン』(フランス・米国、リュック・ベッソン)のカメラは、世界を描出するのに極めて的確である。孤独な殺し屋と家族を失った少女という人物造形や、異色な男女の愛情物語という筋立てだけでは…

自然と人間

自然は、動植物の王国に生命の種を惜しみなくたっぷりとばらまいてきた。しかし、命を育むのに必要な空間や養分についてはいささか物惜しみする。……必然性、すなわち厳然と全体を支配する自然の法則が、生命の数を定められた範囲内に制限するのである。(マ…

格差を引き継ぐのではなく…

格差に対するボン=ジュノの問題意識は、『スノーピアサー』(韓国・米国・フランス)でも一貫している。氷河期の高速列車内は、極端な階層社会。自由を求める最下層の労働者たちが、支配層の率いる武装集団と激しい攻防を繰り広げる。 反乱群のリーダーが支…

人間らしさ

4月3日 人間らしさ 『人間の時間』(韓国)でも、キム・ギドク流の容赦なさは健在だ。空中に取り残されたクルーズ船内で、欲望むき出しの乗客同士が殺し合い、食量が尽きてからは肉を食らい合う。唯一生き残った女は、レイプされてできた子どもを産む。木々…

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