自然と人間

 自然は、動植物の王国に生命の種を惜しみなくたっぷりとばらまいてきた。しかし、命を育むのに必要な空間や養分についてはいささか物惜しみする。……必然性、すなわち厳然と全体を支配する自然の法則が、生命の数を定められた範囲内に制限するのである。(マルサス斉藤悦則:訳『人口論光文社古典新訳文庫

 

 法則の行き渡る範囲は、いまや万国共通となったが、対策に使えるべきエネルギーは国力によって差がある。力のない者や少数派に属する層は、政策において軽視され、ひっそりと消え果てていくのみである。ふだん便利屋として扱われていた者も、いざというときに、だれかの面倒を期待できるわけではない。いかなる分野でも、生き残るべき者は生き残り、死すべきものは死す。その流れを無理にねじ曲げようとしても、余計な労力とコストがかさむのみだが、生き残る者は、なりふりかまわず、何らかの知恵を働かせるだろう。

 自然の法則と闘うことはできないし、闘うべき対象でもない。付き合い方を見極めるのが、人間の力を知るということにもなろう。

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