2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

日本語が亡びないために

地球のありとあらゆるところで、さまざまな作家が、さまざまな条件のもとで、それぞれの人生を生きながら、熱心に、小説や詩を書いている。もちろん、六十五億の人類の九割九分九厘は、そんな作家が存在したことも、そんな小説や詩が書かれたことも知らずに…

栄光と転落

永遠に栄える者は、いない。 『英国王 給仕人に乾杯!』(チェコスロバキア、イジー・メンツェル)の給仕も富豪も、栄光と転落を味わう。築き上げた財産もチェコの体制の変化で失うばかりか、投獄されてしまう。 もっとも、命がある分だけ、他国人よりもまし…

本の未来

出版不況で雑誌の休刊が続出するなか、『本の雑誌』でさえ、存続が危ぶまれる状態だ。 2008年になって当社の経営財務状態は急激に悪化した。……気がついたら存亡の危機に陥っていたのである。(『本の雑誌』1月号編集後記) 出版市場の風化は、書き手の将来に…

フィクションの強度

『風のガーデン』(フジテレビ)では、末期がんの父に花嫁姿を見せるために、娘が偽の結婚式を挙げる。 式が茶番であることを父親は見抜いている。それでも、娘や祖父の思いやりが心に響く。 強度の強いフィクションならば、仕掛けが明らかになっても人を興…

2008年、日本

『2008年報道写真展』(日本橋三越本店)には、麻生首相や北島康介といった著名人のパネルの間に、犬の写真が貼られていた。 飼い主に捨てられ、保健所で殺されるときを待つ犬。 こうした状態は、犬だけではないだろう。

美の基準

『WALL・E/ウォーリー』(米国、アンドリュー=スタントン)では、近未来の地球で、ごみ処理ロボットが白いロボットに恋をする。 それにしても、ロボット同士が相手の性別や容姿の良し悪しを判断する基準は、何だろうか。

つかの間の青春

少年時代に罪を犯したが、更生して出所。名前を変え、仕事に就き、友人や恋人もでき……。すべてが順調に行くはずだった青年が、過去を暴露され、すべてを失ってしまう。 筋立ては以上だが、『BOY A』(英国、ジョン・クローリー)は、悲劇を強調するだけの映…

作家の視点

鴻上尚史は、『泣いた赤おに』(浜田廣介)の赤おにではなく、青おにに注目した。 「どうして、青おには去ったのか?」「どうして、青おには黙っていなくなったのか?」「どうして、青おには赤おにを助けたのか?」(鴻上尚史『人生に希望をくれる12の物語』…

永遠のロッカー

2006年10月29日と11月1日。2日間のライブで熱唱したのが、ザ・ローリング・ストーンズ。 『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』(米国、マーティン・スコセッシ)で映し出された彼らは、主力メンバーが60歳を超えているほど思えないほど、歌…

物語の始まり

物語というものは、神代の昔から、この世に起きた出来事を書き遺したもの。正史といわれる「日本紀(日本書紀)」などはほんの一部しか書いていない。実は、物語のなかにこそ細かいことが詳しく書いてある。作者はそれを、そのまま書くことはしないし、又い…

表現のエネルギー

『巨匠ピカソ 魂のポートレート』(サントリー美術館)、『巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡』(国立新美術館)の両展から、晩年まで衰えることを知らなかったピカソの旺盛な創作欲がうかがえる。 かつては前衛的だったピカソの画法も、彼の絵を見慣れてしまった現…

秘密の隠し方

『バンク・ジョブ』(英国、ロジャー・ドナルドソン)で描かれた事件は実話だそうだ。銀行の地下金庫に、王室から裏社会の人間まで、著名人のスキャンダルにかかわる秘密書類が眠っていたというもの。 しかし、それほどの秘密ならば、銀行という公の場所では…

その日まで

平均年齢80歳のロックコーラスグループが、英国にいる。 ドキュメンタリー映画『ヤング@ハート』(英国、スティーブン・ウォーカー)は、メンバーの練習風景を追う。 エネルギッシュに歌い、難曲にも果敢に挑む老シンガーたち。コンサート直前に、メンバー…

唐突な体験

突然やってきて、その後、突然消える女。 『その木戸を通って』(日本、市川崑)の妻ふさが、『夕鶴』のつうと違うのは、主人に何の罪もないことだ。 唐突な出会いと別れは、だれにでもあることなのかもしれない。

アクセスカウンター