2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

毒には毒

『アンチクライスト』(デンマーク・ドイツ・フランス・スウェーデン・イタリア・ポーランド、ラース・フォン・トリアー)は、トリアー節が炸裂する。 息子をなくした妻も、彼女を治療するセラピストの夫も、自分を極端なほど追い詰め、残酷な結末を導き出す。 …

教育的指導

『平成ジレンマ』(日本、齊藤潤一)の戸塚宏は、大義を自認している。現実社会に人間をはめこむためには、戸塚ヨットスクールのようなスパルタ教育が有効と考えているからである。 戸塚の発想は、決して特別なものではない。弱い人間を見下し、正そうとする…

今できること

世に出回る映画や小説の99%は、主人公が自分の運命を変え、新しい世界を切り開く物語といえる。 しかし、現実は違う。例外はあれ、ほとんどの人はある国、ある状況に生まれたら、その限られた世界の価値の中で、ベストを尽くし、自分の生きる道を見いだし、…

二人暮し

戦争で生き別れた元夫婦。上海で暮らす元妻を台湾の元夫が訪ねる。新しい家族と平穏に暮していた彼女に、もう一度、一緒に暮そうと、打ち明ける。現在の夫は、妻の気持ちを察し、二人を送り出そうとする。 新婚後に夫が米国に行くという孫娘は、離れて暮すこ…

脳内世界

批評的要素が持ち味の演劇ならば、漫画のパロディーのような設定であっても、どこかでシリアスな展開に反転するものである。 ところが、『俺のお尻から優しい音楽』(五反田団、三鷹市芸術文化センター)は、デフォルメされた演出が延々と続き、最後までコン…

不足の効用

研究の意欲が生まれるのは、何かに同調したときだろうか。 (他人の書いたものを読んで、「まったくその通りだ! 私も、前からそう思っていたのだよ」と思ったときには、そのことについて研究しようという気にはなりません)。……他の人の話を読んだり聞いた…

生命と許容

「異なるものを排除し、自分が出す汗やにおいまでをも消そうという傾向は、人間らしくない理性を失った行動をしたり、精神的な面を含めて生き物としての生命力が低下したりすることにもつながっていきます」(藤田紘一郎「「きれい好き」の落とし穴」『朝日…

人間の本性

情に厚く、面倒見がいい。いかにも好人物に見える人物ほど、腹の黒さを隠しているのかもしれない。 『冷たい熱帯魚』(日本、園子温)で善悪双方の表情を見せつける村田は、決して特異な人物ではない。人間の本性そのものなのだ。

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