教育的指導


『平成ジレンマ』(日本、齊藤潤一)の戸塚宏は、大義を自認している。現実社会に人間をはめこむためには、戸塚ヨットスクールのようなスパルタ教育が有効と考えているからである。
 戸塚の発想は、決して特別なものではない。弱い人間を見下し、正そうとする主張は、指導者層に共通するものなのだ。もし戸塚が極端な手法をとらず、公の場で本音を口にするようなことがなければ、共鳴者はさらに増えるだろう。
 戸塚にとって、学校や家庭に抵抗したり、逃避癖のある少年少女は軽蔑の対象である。だが、彼らの反応には、現実社会への警鐘が込められているのだ。精一杯の異議申し立てを、教育的指導という名目で、押さえつけてしまっていいのかどうか。

 

 

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