2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

理論派の脳内

理論派アニメ監督の発想と製作過程。『高畑勲展』(東京国立近代美術館)は、企画書の展示など、工夫を凝らされた催しだ。 常に新しい試みに挑み、熟達なスタッフの技能を最大限に取り入れ、驚くべき芸術を編み出した異才。時間と予算の超過で会社ともめたや…

希望的な展開

この世界は、大人の常識によって秩序が保たれている。どうしようもない事態に陥ったときに身を守ろうとすれば、均衡を打ち破らなければならない。仮にそこで何かを得たとしても、代償を払うことになろう。踏み切りには、覚悟が要るのだ。 『天気の子』(日本…

武器としてのグウタラ

10年ぶりの再演、五反田団『偉大なる生活の冒険』(アトリエ・ヘリコプター)は、主人公が40代になっているが、働くこともなく、元彼女の家で男がゴロゴロ寝転がったり、ゲームをして暮らすというグウタラぶりは、変わらない。彼は他人を羨ましがるわけでも…

繰り返す時間

誕生日の日にベビーマスクの人物に殺される。『ハッピー・デス・デイ』(米国、クリストファー・ランドン)の女子大生は、そんな夢を何度も見る。目覚めるといつも、同じ日の同じ時間だ。見るたびに、かかわる人間への対処を変えるのだが、それでも殺される…

喪失の認識

解説は別紙に書かれているが、見ずに現物だけ見てもいい。 空間と展示物が呼び覚ますものは、観る者がすでに知っているものだ。決して明るいものではないが、喪失を再認識することで、会場を出た者は、あらためて、生を実感するだろう。

バンドの入り口

聞きやすくかつ、変化に富みつつ、しっかり作られたバンド音楽。『SHISHAMO BEST』は、すべての入り口だ。

歌は続く

ポップス、グループサウンズ、ニューミュージック、演歌……。桑田佳祐が一人で歌う大衆歌謡ショーは、歌の表現力、演奏の技術力、まじめさとおふざけのバランスが卓越しているだけでなく、世界のあらゆる要素を取り入れて発展してきた大衆歌謡の歴史を通して…

熟練の旅

黒沢清らしいホラーまがいの場面、裏のありそうな人物……。『旅のおわり世界のはじまり』(日本・ウズベキスタン・カタール)は、黒沢清らしい色合いは残しながらも、異国で撮ったためか、映像も展開も、みずみずしさがある。 番組制作のためにウズベキスタン…

地獄への道

情のある殺人鬼。などといった中途半端なキャラクターは、ラース・フォン・トリアーの世界とは無縁だ。『ハウス・ジャック・ビルト』(デンマーク・フランス・ドイツ・スウェーデン)は、恋人もその家族も、容赦なく殺害し、死体を人形のように変形されて悦…

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