2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ドラマの誕生と結末

元大学教授がデリヘル嬢の女子大生をかばうために、彼女の婚約者に嘘をつく。 関わるべきでなかった人間が、関わったために、ドラマが生じ、思いがけぬ事態に陥る。 『ライク・サムワン・イン・ラブ』(日本・フランス、アッバス・キアロスタミ)は、ラスト…

夢を売る

結婚詐欺にだまされても、女は悲観するわけではない。だました男には事情があったのだ。まだ自分を愛しているはずだと思い込んで、うっとりする。 最初は罪悪感のあった男も、だんだん無抵抗になっていく。あんな善人をだましていいものかと躊躇することもあ…

言葉の怖さ

文章というのは怖いものです。とても鋭い武器になります。時として相手を傷つけるし、自分をも傷つけます。扱いには本当に気をつけた方がいい。言葉に関しては僕はプロだけど、その怖さは身にしみて知っています。(「村上春樹メールインタビュー」『ダヴィ…

世界が焼き尽くされる前に

CG全盛の時代、ミニチュアや小道具を主体にした特撮は、役目を終えつつある。作られたものは壊され、ノウハウだけが残る。だが、蓄積した職人芸と奇抜なアイデアは、想像の世界を形作るうえで不可欠だ。 今日では名前すら耳にする機会のないマイナーな特撮…

避難民

救援物質の衣服もデザインが気に入らなければ、着たくない。励ましの歌は、当事者でない者の独りよがりに聴こえる。当選した仮設住宅も、狭くて貧相な造りには、がっかりする……。 被災者の反応をぜいたくだと言って、喝破することはできない。災害の有無を除…

小説のリアリティ

どんなリアリズム小説の場合であろうと、言語表現は現実に何がしか抽象化の作用を程こさずには成立しえず、そのぶん「生の」現実からは遊離することになる。他方、現実からの遊離を最初から前提としたファンタジーや幻想譚の場合、何らかの堅固な具象の手触…

人が書くべきもの

公立はこだて未来大(北海道函館市)の松原仁教授らは6日、SF作家の星新一さんが得意とした「ショートショート」と呼ばれるジャンルの小説を、人工知能(AI)を搭載したコンピューターに制作させる試みを始めると発表した。 ショートショートは400字詰…

手と頭

イメージは、あらかじめ頭で考えてから描くのではなく、描きながら考えつくものだ。もっと言うなら、描くことは、それじたいが形を変えた思考なのだ。(ショーン・タン、岸本佐知子・訳『鳥の王さま』河出書房新社) 手を動かさなければ、頭も動かない。

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