夢を売る


 結婚詐欺にだまされても、女は悲観するわけではない。だました男には事情があったのだ。まだ自分を愛しているはずだと思い込んで、うっとりする。
 最初は罪悪感のあった男も、だんだん無抵抗になっていく。あんな善人をだましていいものかと躊躇することもあるが、一度入り込んだ道からは抜け出せない。やめるならば、命を絶つか、捕まるかしかない。
 失った飲食店を立て直すため、共謀で結婚詐欺を働く夫婦。『夢売るふたり』(日本、西川美和)とは、皮肉なタイトルだ。被害者に夢を与えた分、彼らの夢を失ったのである。

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