2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

パラダイスの定義

3部作の最終作『パラダイス:希望』(オーストリア・ドイツ・フランス、ウルリッヒ・ザイドル)では、恋愛に不慣れな少女の残酷な体験が描かれている。 ダイエット合宿での奇異な出来事と複雑な思い出は、彼女に成長をもたらすと共に、生涯のトラウマをも引…

魔力

ミュージカルアニメ『アナと雪の女王』(米国、クリス・バック、ジェニファー・リー)は、壮麗な雪の映像に負けじと、女王を演じるイディナ・メンゼルの主題歌『Let It Go』が、高揚感を引き立てる。 悪にもなるが、善にもなる魔力。絵や歌も同様だ。

無法者

生きるためには当局の言い分を聞くばかりが能ではない。 電気技師のロン・ウッドルーフは、非合法の薬を世界中から手に入れ、自身と大勢のエイズ患者を生きながらえさせた。無法者ゆえに、現代の英雄になりえたのだ。 『ダラス・バイヤーズクラブ』(米国、…

沈黙と便乗

私が問題にしたいのは、騒動後に「自分は怪しいと思っていた」と言い出す人たちである。……騙された人間は、騙されたことを反省すればいい。しかし、したり顔で「後出しジャンケン」をする人間には今後、注意しなければならない。彼ら・彼女らは、おかしいと…

小説の価値

その人の考えたことが本当に新しいものであるならば、そんな作品はまだ現実には存在しないのだからそれを批評する批評言語だってまだ存在しないのである。だから自分の作品の新しさを保証してもらおうと思っても、現実にその小説を書きあげてからでない限り…

心をつなぐ

『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(米国、アレクサンダー・ペイン)は定番のロードムービー。怪しげな懸賞金をめぐる旅を通じて、父子に情愛が芽生える。 たかりやの親類や、饒舌な母など、二人に関わるのはクセモノばかり。 世間は猥雑だが、ささやかな…

人生の翻訳

ドストエフスキーの長編小説を翻訳したスベトラナ・ガイヤー。第2次大戦下、ウクライナからドイツへ移住し、語学力を活かして生き延びた。 『ドストエフスキーと愛に生きる』(スイス・ドイツ、バディム・イェンドレイコ )で映される彼女の一日は、執筆作業…

時のあと

震災以降、新たな関係が芽生えたり、生き様が変化した家族もいる。 生き続ける者は、失ったことの痛みを背負いつつも、再出発を恐れてはならない。 山田太一・作のドラマ『時は立ちどまらない』(テレビ朝日系)は、東北地震をきっかけに変容した二家族の苦…

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