2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

時間割

父はそういう単純な内容の生活に至極単純な形をつけた。一日の時間割を正確無比に守り、破目をはずして飲むのもその日、その時期を正確に決めていた……。(吉田暁子『父 吉田健一』河出書房新社) 日々、きちんと扱われた時間割。 長い目で見れば、仕事の質量…

評価する者

僕もインタビューを受けて、賞関連のことを質問されるたびに(国内でも海外でも、なぜかよく質問されます)、「何より大事なのは良き読者です。どのような文学賞も、勲章も、好意的な書評も、僕の本を身銭を切って買ってくれる読者に比べれば、実質的な意味…

もう一つの物語

映画が本当に面白いのは、……上辺で語られている物語がある一方で、それとは別の次元で、もうひとつの物語がスタイルとして語られているからです。(塩田明彦『映画術』イースト・プレス) 大方の観客には、単一の物語しか、気付かれない。そのために、単一の…

心地よさの演出

『ニシノユキヒコの恋と冒険』(日本、井口奈己)は、あらゆる年代の女性に、もてる男の話だ。 空間や小道具に丁寧なこだわりを見せ、いそうもない人物やありそうもない出来事を、違和感なく演出する。 部屋も街も、すべてが心地いい。だからこそ、失うこと…

解釈と想像

シェイクスピアの作品は一つとして翻案でないものはない。……併し実際に問題になるのはもちろん、彼が書いたものに種本があるかどうかというようなことではなくて、彼がその与えられた材料をどういう風に解釈し、それがそれ以外に取ることが出来る形を自由に…

騙される快感

どんでん返しの話は世に多いが、『鍵泥棒のメソッド』(日本、内田けんじ)は主要人物の生き方も逆転させる。 無器用な失恋役者が、金持ちの鍵を手に入れて、意外な才能を発揮。冷徹な殺し屋が気弱な記憶喪失者として右往左往。恋に無器用なキャリア女性は、…

狂乱こそ爽快

ボロ株を話術で売り払い、株価操作で大もうけ。手にした金を湯水のごとく使い、ドラックとセックスに明け暮れる。 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(米国、マーティン・スコッセシ)のジョーダン・ベルフォートに、共感できる要素は何もない。だが、狂…

人生と映画

人生について考え始めると、すべては映画なんだなって実感するよ。見るものすべてが映画なんだ……。(ジョン・カサヴェテス:著、レイ・カーニー:編『ジョン・カサヴェテスは語る』幻冬舎) 確立することもなければ、終わることもない映画。 まさに、人生。

アクセスカウンター